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第131話

「なるほどね、そういう思惑があったのか……」 不意に後ろから声が聞こえ、そちらへ目を向けると和之さんらが(はしご)を使って登ってくるのが見えた。 改めて周囲を見渡すとどうやらボクたちは屋上の更に上、階段があった場所から真正面にある小さな建物の上に立っているらしかった。 そこはいつも寝かせて貰っている部屋の半分くらいの面積で、しかしながら柵もなく肝心の階段らしきものが何処にも見当たらない。 ふと煌騎はボクを抱っこしたままどうやってここまで登ってきたのだろうと疑問が浮かぶ。でも最後に(はしご)から登ってきた流星くんの姿を見て、やっぱり"それ”を使ったのかと漸く合点がいった。 その彼が八重歯を覗かせながらにかっと笑う。 「チィの為っていうなら俺ら全力でサポートするぜ」 「まぁ、そういう事なら仕方がないかな。……でも俺は正直いまでも賛成はし兼ねる」 「チィを監禁していた奴らの正体が掴めない以上、護るには不向きな場所だからな。事前に予測していた通り"蛇黒”も動き出したようだし……」 流星くんの言葉でやや不満気だった朔夜さんの表情が少し和らぎ、風に靡く前髪を掻き上げながら口角を上げた。 だけどその口調はあくまで自分は不本意だと主張するもので、和之さんは困ったような顔で腕を前に組んだ。 後者のは亜也斗の事だと思うけど、彼らは恐らくそれだけを言っているのではないのだろう。 みんなが難しい顔をして考え始めたのを余所に、煌騎はその会話には加わらずボクを連れたまま陽当たりの良い場所へさっさと移動してしまった。 そしてそのままコンクリートの上にドスンと腰を降ろしてしまう。ボクは必然的に彼の膝の上に座る形となった。 「……んと、えと……こ、煌騎?」 突然の行動に驚きを隠せず名前を呼んでみるが、彼は完全に寛ぎの体勢に入ってしまっている。 両手を上に挙げたかと思うと大きな伸びをし、そして下ろすついでに片方の手を呆然とするボクの頭の上にポンと乗せた。 「なぁチィ、今回の事で学校キライになったか?」 「………う?……」 「もう登校したくはないか?」 真剣な表情をする煌騎にボクは首を横に振った。確かに怖い思いはしたけど、彼のさっきの話を聞いてしまったらもう首を縦には振れない。 それを察した煌騎は少し困ったようにフッと笑うと、またボクの頭をクシャクシャにして撫でた。

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