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第132話

「………ん、ホントは…ちょっと怖い……」 躊躇いながらも本音をポロリと零す。 煌騎は"やっぱりな”と小さく呟いたけど、別に怒ったりはしなかった。ただ哀しそうに微笑んだだけ……。 何だか申し訳なくて、お胸がぎゅううぅってなる。 「あっ……あの、でも……えと、煌騎がずっと傍にいてくれるならボク頑張れると……思う…よ?」 正直に言ってしまって後悔した。せっかく彼がボクの事を考えてしてくれた事なのに、それを台無しにしたような気持ちになる。 だから懸命にそう言い募った。けれど煌騎は首を横に振り、それは気にするなと宥めてくれる。 あくまでボクの気持ちが優先なのだからと…… 「だったら慣れるまでは俺らと此処で一緒に屋上登校しないか?」 「………おくじょ……とぉ…こぅ……?」 (おもむ)ろに和之さんがそう提案してくれる。 聞き慣れない言葉にボクはキョトンとなって首を右に傾げた。 彼が言うにはボクは過去の生い立ちから対人恐怖症のきらいがあるらしく、いきなり人の大勢いる場所へ通うのはハードルが高すぎたのだという。 ならば先ず時間をずらして登校し、ここで外に出る事に慣れてから徐々に人のいる教室へ行けるよう訓練しようと、そう丁寧に説明してくれた。 「……うん、それなら…だいじょぶ、かも……」 今度はちゃんとよく考えてから頷くと、煌騎が嬉しそうに頬を緩めていい子だと頭をまたグリグリする。 褒めて貰えて嬉しくなったボクはクスクスと笑い、その幸福感を噛み締めた。 でも暫くすると昨日夜更かしをしたのが祟ったのか、陽当たりが良い事もあり大きな欠伸を漏らしてしまう。 それを見た流星くんや朔夜さんらは力が抜けたように笑い、此方にやって来てボクたちの周りを取り囲むように腰掛けた。 そして各々に寛ぎ始める。 「チィにはホント、敵わないなぁ……」 「なぁ和之、それ俺たちも参加していいんだよな?」 和之さんが苦笑いを浮かべれば、流星くんは嬉々として彼の提案した“屋上登校”の参加希望を訴えた。 朔夜さんに至っては何処から取り出したのかノート型PCを無言で膝の上に置き、素知らぬ顔で立ち上げ操作し始めている。 けれど耳はしっかりこちらに向けているようで、流星くんが冗談を言う度に時折彼の口端が上がったり下がったりしていた。 ボクは重くなった瞼を擦りながら、ホントにみんな仲がいいんだなぁとそれらを眺めていた。

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