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第136話

神埼は眉を顰めて明らかに難色を示す。 かなり自信があった策だけにショックを受けたが、ここで引く訳にはいかない。どうせ彼の事だ、蛇黒のナンバー2である吉良の事が気になっているのだろう。 先ほどあの場に駆けつけて亜也斗を戒めた青い髪をしたあの男、チームトップの腹心的存在だけれど実はそれだけではなく、代々常磐家に仕える執事の家系らしいのだ。 常磐家といえば全国的にその名を轟かせる、大手流通会社を創設した大財閥だ。亜也斗はその現総取締役会長の直系の孫に当たる。それ故に学園内で問題を起こすわけにはいかず、彼をお目付け役として傍に置いていた。 けれどそれは取り立てて問題視する事ではない気がする。何故なら吉良は学園の外でなら亜也斗の非道な行いはすべて黙認し、裏で財閥の力を借りて揉み消しているからだ。 でもそれを伝えても神埼はやはり納得しなかった。 「俺が問題視してるのは常磐の方だ、バーカ。あいつは手のつけられない快楽主義者だからな、何かにつけ暴走しがちだ。しっかり奴の手綱を握れる器の者が必要だろう」 そう渋い顔をしながら言う。それは私も気掛かりだっただけに反論はできなかった。言葉を詰まらせると神埼は軽く息を吐く。 「先ずは吉良をどうにかしろ、話はそれからだ」 「え、そんなの無理よ。だって私、あの男に嫌われてるものっ」 私は即座に首を横に振った。 吉良は裏で汚い仕事をしてるクセに変に潔癖で、ウチの家業をそれはもう毛嫌いしているのだ。 だから無理だと連呼するも、神埼は聞き入れず不機嫌に眉根の皺を濃くするだけだった。 とその時、前方にHRを終えて職員室に向かうこの学園の生徒会長らしき人物が、こちらに向かって歩いてくる姿が見えて私は慌てて口を噤む。 神埼にも目配せして何事もないよう装いながら、無言で彼をやり過ごそうとした。 しかし普段は家業の事もあり敬遠されがちな私たちなのに、この学園の生徒ではないからか彼は私の傍まで近寄ってくる。 その表情は不穏な空気を読み取ったかのように訝しげだった。 「白銀さんの許嫁の鷲塚さん、ですよね? どうかされたのですか、お伴の方とこんなところで……」 彼はそう言うと、こっそり腕時計を見る仕草をする。それに釣られて私も携帯で時刻を確認すれば、HRが終わってそう幾許も経っていなかった。

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