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第146話〜不穏な動き〜(煌騎side)

チィが笑顔を振り撒きながら去ってから数分後、室内はまだ暖かい空気に包まれていた。 それぞれが己の席に着くまでに談笑を交わす。 それを何も言わず静かに眺めながら口端を上げ、俺も自分の席に腰を落ち着ける。 あいつのお陰でチーム内の雰囲気も随分と変わった。 以前は必要最低限の言葉しか発しなかった朔夜や、料理を趣味としていた和之もワザワザ人の食事面で干渉したりする事もなかった。 一見何も変わってなさそうな流星や虎汰ですら、普段の短気はナリを潜めてチィの前では極力喧嘩をしないよう心掛けている。 それがチームにとって良いことなのかどうかはわからないが、新しい風が吹いているのは確かなようだ。 和んだこの場の空気を壊すのは少し忍びないが、今後のチームに影響を及ぼす大事な話をしなければならない。 俺は軽く脚を組んで皆の注目を集めた。 「各自もう耳に入っていると思うが今朝の件以降、蛇黒の動きが活発になっている」 そう口火を切ると、和之たちの顔から笑顔が消える。瞬時にスイッチがOFFからONに切り替わり、野生の獣のような鋭い眼差しに変貌してこちらに向けてきた。 「俺たちが学校に出ている間に繁華街で派手に暴れたそうだ。対処した連中によれば覆面をした7~8人のグループが、一般のサラリーマンをボコって回っているらしい」 「―――はぁっ!? なんっだよソレッ!!」 和之が俺の言葉を引き継ぎ、皆に詳しい説明を施す。しかしそれを聞いた虎汰は驚きに目を見開いた。 恐らく怪我の治療中に知らせが入ったのか、直ぐに頭に血が上って手がつけられなくなるこいつの行動を鑑みて、虎子が詳細を伏せたのだろう。 それが気に入らない虎汰は妹にこそ怒りをぶつける事はなかったが、代わりにその内容に激しく激怒し声を荒げる。 「あいつら一体何がしたいんだよ! 朝イチでチィを浚おうと企んだり、関係ない一般人にまで手ぇ出しやがって……許せねぇッ!!」 怒りを抑えられない虎汰はソファの肘掛けに拳を振り下ろす。――が、負傷した肋骨に響き、声にならない悲鳴を挙げてその場に蹲った。 その光景を冷淡な眼差しで見ていた朔夜は、愛用のPCを卓上で起動させながらポツリと呟く。 「そんなの決まってる、どうせこっちに戦争を吹っ掛けたいんだろ……」 あくまで冷静に返す朔夜に虎汰は苦虫を噛み潰したように顔を顰め、腹立たしそうにそっぽを向いた。

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