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第148話

その点、虎子なら女の事細かな気配りでよくあいつの面倒を見てくれているし、チィも身構える事なく彼女に甘えられている。 今のあいつに必要なのは母性だ。それは男である俺たちには到底与えられないものだった。 「お前がどうしてもというなら、チィの件が片付くまでで構わない。頼む、了承してくれないか」 怯む虎子に俺は更に言葉を続ける。できれば虎子自身がちゃんと納得し、事を受け入れてくれるのを強く願う。 長い沈黙が続いたがなかなか返事を返さない事に、痺れを切らした虎汰が興奮気味に捲し立てた。 「すっげぇじゃん虎子、お前ずっとウチのチームに入りたいって言ってたじゃねーか! なんで今更そんな渋るんだよッ!?」 「だって白鷲は女人禁制だったんじゃ……」 虎子は強張った表情のまま呟くと、そのまま押し黙ってしまう。なるほど、一番のネックはそこだったか……。 ならばと活路を見出だした俺は、一気に畳み掛けるように予め用意していた切り札を提示した。 「既に歴代のトップにも承諾は取ってある。そもそもその“伝令”を発令した5代目総長の桂木(かつらぎ) (しょう)が"初代幹部の娘なら問題ない”とお前を推しているんだ」 「―――えっ、奨さんがっ!?」 「うわマジかよッ!? スゲェよ虎子! あの人に認めて貰えるなんて、もう入るっきゃないだろ♪ 」 興奮のあまり虎汰は放心する虎子の手を取るとブンブン振り回す。だが彼女も満更でもない様子で、硬い表情が少し緩み、その顔からは笑みが僅かに零れていた。 二人が喜ぶのも無理はない。双子にとって奨は10年来の憧れの人だった。あの忌まわしい事件が起こった日、俺と同様に虎汰や虎子もその場にいた。その時二人は奴に助けられたのだ。 俺は奨と会話した内容を思い起こす―――…。 まだチィたちと屋上でのんびりと過ごしていた時、奴の方から連絡を寄越してきた。液晶画面に表示された【桂木 奨】という名を目にし、俺はそっとチィの傍から離れてスマホを通話状態にする。 『よう煌騎、俺だ♪ 元気にしてるか?』 奨の第一声は至って普通だった。 まるで旧知の友に連絡を取ったかような相変わらず軽いノリで話すそいつに、思わずその通話を切りたくなる。 だがチームOB、しかも元5代目総長が現総長の俺に直接連絡を取るのは異例中の異例だ。知らず全身に緊張が走る。 俺は敢えて何も言わず、奴が話し出すのを静かに待った。

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