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第149話

『ははっ、そう身構えるなよ煌騎。ある噂を小耳に挟んだんでちょっと連絡してみただけだ』 「…………ある噂?」 俺は首を傾げた。奨の耳に入る噂など生憎(あいにく)見当もつかない。こいつは大学を卒業すると同時に親が経営する大手企業会社へ、身分を隠しコネなしで難なく就職した。 いずれは大きな会社を継ぐ身のハズだが昔から気さくなヤツで、自分の置かれている立場にも(おご)らず後輩の面倒見も良かった為、今でも奨の周りには彼を慕う者から自然と情報が集まる。 そんな奴の元に寄せられた情報……、もしかしなくとも俺の"拾い物”の件だろうか? ようやく思い当たったところで、奨はクスリと笑うと声のトーンをやや落とした。 『お前、何か珍しい拾い物をしたらしいじゃないか』 「………フン、やっぱりその事か。確かに拾い物はしたが、それが何か問題でもあるのか」 軽く鼻で笑う。もうその情報が耳に入っているとは、流石としか言いようがない。否定するのも面倒で俺はそれをアッサリと肯定する。 表向きは白鷲から離れて久しい奨だが、チームの為にこいつは常に目を光らせていた。だとしたら、危険分子は直ぐにでも取り除きたいのかもしれない。 奴から警告を受けるのかと思ったが、どうやら違ったようだ。奨はまたクスリと笑った。 『相変わらず目上の人間に対して礼儀がなってねーな、お前は……。年上をちっとは敬えっ』 「文句があるなら連絡して来なければいい。用がないなら切るぞ」 『ったくあー言えばこー言う、ホント小憎たらしいガキだなぁ!……まぁいいや、今日はそんなこと言う為にわざわざ電話したんじゃねーし』 警戒する俺に奴はワザとフザけた事を言いながら、コチラの出方を伺う。なので敢えていつもこうして粗野に返すようにしている。 仮にも先代の総長に失礼極まりない対応だが、俺は昔から誰に対しても敬語は使わない。それを知る奨もサバサバとした感じでそれを許容してくれた。 この懐の大きさも人から慕われる要因のひとつなんだろう。それから間を置いて今度は真剣な口調で奴は話し始めた。 『今朝の一件は人伝に聞いた。煌騎……あの伝令が邪魔になってるんなら、今すぐ歴代に連絡取って撤回の許可を取れ』 「伝令って……まさかッ、奨が発令したアレのことか! だがアレはッーーー…」

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