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第151話

軽い目眩を起こしそうになり、ふらりと真横にある給水塔に寄り掛かる。すると少し離れたところでチィが心配そうに、こちらをしきりに見ているのが視界の隅に映った。 何も知らないなりにあいつは俺の僅かな変化を敏感に感じ取り、少しでも力になりたいと思っているのかそわそわとしている。 余計な心配を掛けないよう笑って返さなくてはと思うのに、情けないが今の俺は引き攣った笑みしか返してやれない。 それを見たチィは堪らず駆け寄って来ようとしたが、何とか手をやんわり前に出して制し、こちらに来るなと首を横に振った。 『すまん、やはりお前に話すのは時期が早過ぎたか』 「なんの心配をしているのか知らないが、バカのひとつ覚えのように気遣うな。それよりその情報はいつ手に入った?なぜ今まで俺に黙っていた!」 予想外にショックを受ける俺に奨が心配した様子で声を掛けてくるが、その言葉を撥ね付けて逆に詰問する。 自分では気づけていなかったが、もはや相手を気遣う余裕も持てないほど取り乱していたようだ。 俺の父親が戻ってきているというならどうして連絡のひとつも寄越さないのか、これまで何をしていたのか聞きたい事が山程あった。 けれどそれらはどれも、赤の他人である奨に聞いたところでなんの意味も成さない。 『らしくないぞ煌騎、誰彼構わず噛みつくな。ちょっとは落ち着けっ』 そう否されてやっと我に返る。どんな時も冷静でいるよう心掛けていたハズだが、確かに今の自分は正常ではない。 素直にそれを認められる性分ではない為に、申し訳程度の小さな声で“悪い”とだけ謝罪を口にしたが、奴は気にするなと軽く流してくれた。 『実はな、俺も10年前のあの日からずっと疑問に思っていた事があるんだ……』 俺が落ち着くのを見計らって奨が静かに話を戻す。あの惨劇があった日、チームのたまり場である倉庫には多くの幹部OBが集められていた。 招集をかけたのは初代総長である俺の父親だ。 当時鷲塚組は敵対する組織と抗戦の真っ只中で、街全体が緊迫した空気に包まれていた。いつ、何処で誰が巻き込まれるともわからない状況だ。 そんな中なぜかは分からないがその場にOB幹部の子どもらが大勢いて、初代幹部の子である虎汰や虎子の姿もそこにあった。

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