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第158話
「いい加減に落ち込むの止めろよ和之ぃ、お詫びに晩飯奢ってやってるじゃないかぁ、な?」
まったく悪びれることなく健吾さんが言う。
ここは以前にも来たコトのある『white eagle』、虎汰と虎子ちゃんのご両親が経営するお店だ。
あの後ボクたちは放心状態のまま固まる和之さんを何とか宥め、半ば無理やり引き摺る形でこの店までやって来た。
目的はもちろん今夜の夕飯を食べるため……。
健吾さんの所為で壊滅状態に陥ってしまったキッチンは今、チームの子たちが全力で修復してくれているらしい。
ボクたちが戻る頃にはある程度キレイに片付けられていると思うんだけど、それでも和之さんはまた納得のいくまで自ら掃除するに違いない。
そう思うと途端に申し訳ない気持ちになる。元はボクがひとりで退治しようとしたからあんな大惨事にまで発展したのだ。
反省の気持ちも込めて深く項垂れていると、煌騎が優しくボクの頭を撫でてくれた。見上げると彼はそっと目元を細め、ボクに慣れない笑顔を向けてくれる。
きっと落ち込むボクを慰めてくれてるんだ。けど申し訳なさすぎてそれに応える事ができなかった。
それを向かいの席で見守っていた朔夜さんが、ボクに聞こえないよう小さくチッと舌打ちすると……
「和之、チィが気を遣うからウジウジすんの止めろ」
と、冷たい一言を自分の横に座る和之さんに浴びせる。彼はうっと言葉を詰まらせたが、ようやく顔を上げてこちらを見てくれた。
でもその顔は悲嘆にくれていてとっても可哀想に映り、なんだかこちらまで胸が苦しくなってしまう。
「ごめんよチィ、もう大丈夫だから気にしないで?」
「う…うん、わかった……」
どこか無理をしてそうな笑顔だったけど、それは今の彼の精一杯だろうからボクも何も言わない。ニコッと笑い返して素直に頷いた。
するとそれを合図にみんな中断していた食事に手を伸ばし始める。一気に賑やかになったボクたちのテーブルは、夕食時だけあって混んでる席の何処よりも食べ物が消えてなくなるのが早かった。
育ち盛りの大柄な男の子が5人もいるのだから、それは当然といえば当然なのかもしれない。中でも虎汰と流星くんの食べる量は凄くて、見てるだけでこっちがお腹いっぱいになりそうだった。
「みんなスゴいねっ、ボクちょっとずつしか食べれない。すぐお腹いっぱいなっちゃう」
「あら、チィは絶対あんな食べ方真似しちゃダメよ? こいつらの食欲は獣並みなんだから! 第一早食いなんてしたら身体に悪いし太っちゃうわよ」
ボクのお隣でフォークと大きめのスプーンを器用に使いながら、カルボナーラをクルクルと巻いて食べる虎子ちゃんは女の子らしくてとっても優雅だ。
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