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第160話〜夢・ユメ・ゆめ……時々悪夢〜

『…………ちゃんっ……ちゃん、起きて?……こんなトコで寝ちゃダメだよ!』 ん…んぅ、誰かがボクを呼んでる……。 でも起きなきゃと思うのに、身体が鉛のように重くて言うことを聞いてくれない。前の日までママがボクの背中にお絵描きするって言って、何かチクチクしてたから燃えるように痛くて熱い。 あまりに痛いからどうしてこんなことするのって聞いたらママが、これはボクがボクである為に必要なことなんだって……いつかコレがその証になるだろうって言ってたけど、ボクには何の事だかさっぱり分からなかった。 でもママがごめんね、ごめんねって涙を流して泣くから、ボクは背中にお絵描きしてもいいよって許してあげたの。 だけどその日の夜は痛くて眠れなかった。やっといま眠れそうだったのに、ボクを起こすのは誰? もぞもぞと寝返りをうって薄目を開け、手の甲で瞼をごしごししながら声がした方に顔を向ける。するとそこにはボクよりも年上っぽい男の子が立っていた。 『………お兄ちゃ……だーれ?』 『おれは○○!でも皆は"コウちゃん”って呼んでる。それよりお外で寝ちゃダメだろ?父さんたちが探してるからおウチの中に戻ろ』 "コウちゃん”という男の子はそう言うとボクの手を取り、軽く引き寄せて立たせようとする。けれどまだ中に戻りたくなかったボクは、首をプルプル横に振ってそれを拒んだ。 『ヤッ、おウチの中つまんないもん!コウちゃんお外で遊ぼ?ボクさっき、真っ白な仔猫見つけたの』 『……仔猫?どんなの?』 興味を惹かれたコウちゃんはパァッと瞳を輝かせる。 反応が返ってきた事が嬉しくなったボクは、上半身を起き上がらせると小さい手のひらに仔猫を乗せるイメージで、彼に大きさを示してあげた。 『小っちゃいね!お母さん猫はどこに行っちゃったのかな。傍にいなかった?』 『……う?仔猫だけだったよ』 キョロキョロと辺りを窺うコウちゃんに、ボクはコクンと頷く。そしてゆっくり立ち上がると、彼はボクのお洋服についた芝生の草や埃を払ってくれながら考え込み始めた。 『もしかしたら迷子なのかな……、だったら探して保護してあげないと!仔猫は親猫がいないと直ぐに死んじゃうんだよ?』 『さっきの猫ちゃん、死んじゃうの?』 ショックなことを聞いて途端に涙が目頭に溜まる。 コウちゃんはそれを見るなり、慌ててボクの頭をいい子いい子して慰めてくれた。

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