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第164話〜お胸が痛いの〜

遠くの方でバタンッという音が響いた。 瞬時にボクは身を縮こまらせ、"ごめんなさいごめんなさいごめんなさい”と繰り返す。あれはいつも不機嫌な『管理者』さんが地下室に降りてくる時の音に似ていた。 ……ううん、違うのかもしれない。 地下室の扉はもっと重そうな感じだったような気がするし、鈴の音なども鳴らなかった。 わからない、ボクは今……ドコにいるのだろう……? さっきまではとても幸せな夢を見ていた気がするのに、最後の方がどうしても思い出せない。ただ何故だか、ここから早く逃げ出さなきゃと思ったのだ。 だけど今はそんな事どうでもいい。 もっともっと謝らないと、ボクは『管理者』さんにまたいっぱい殴られる。たくさんたくさん謝らなきゃ許して貰えない。 怖い、……怖い、………誰か、助けてっ!! 心の底からそう願うけれど、ボクなんかを助けてくれる人はもうこの世にはいない。 ずっとずっと昔に一度だけ助けに来てくれた人がいたけど、『管理者』さんに見つかって真っ黒な水鉄砲に似たやつで殺されちゃった。 そういえばあの人も面影がコウちゃんに似てた気がする。大人になったらコウちゃんも、こんな風になるのかなって何となく思った。 でも死んじゃった、一瞬で……、赤い血がいっぱい出てた。………だから死んだんだと思う。 もうどんなに望んでも助けは来ないんだ。ボクはこの長い月日の中で、嫌というほどそれを思い知らされた。今日はどれだけ殴られるのだろう? どれだけ虐められるかな……。 ねぇコウちゃん、今すぐボクを助けに来てよ。昔あんなに約束したじゃない―――… 「チィ、そんなところで何してる? かくれんぼか?」 ブルブルと暗闇の中で震えていたら、同じ目線くらいの高さから男の人の穏やかな声が聞こえてきた。 恐る恐る顔を見上げたら、そこには見覚えのある人の姿がちらりと視界に入る。 ―――あぁ、煌騎だぁ……。 その時になってようやくボクは理解する。頭ではなく心で、彼があの求めていた"コウちゃん”だったのだと……。 彼だけがいつもボクの存在に気づいてくれる。 そして、昔から傍にいて励ましてくれていた。 そっか、そこにいたんだねコウちゃん―――…

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