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第177話
止める煌騎を無視して直ぐさま上半身を起こすと、頬を膨らませ動揺から理不尽にもプリプリと怒り出してしまった。
「もっ、どして!? どしてボク発作も起こしてないのにチュウしたのッ!?」
「チュウ?……あぁ、キスの事か。いや、チィの寝起きの顔が無防備だったからつい……な、イヤだったか?」
発作という単語で漸くボクの怒っている理由を察した煌騎は、けれど次には頼りなげに瞳を揺らし、お伺いを立てるような顔で覗き込んでそう聞いてきた。
それが彼の策略とも知らず、ボクはまた顔を赤く染めてひとりわたわたと慌てふためく。
「や……やじゃないよッ!? だってボク、びっくりしただけだもん! でも、でもぉ……うぅっ」
必死に言い募るのに分かって貰えない。本当にただ驚いただけなのだけれど、またこうしてなんの前触れもなくチュウされると、ボクの心臓はきっと壊れちゃうと思った。
そこは譲れないと尚も抗議しようとしたけど、途端に意地悪する時のような顔になった煌騎は口端を小気味良く上げる。
「だったらいいじゃないか。そもそも無防備に俺の前で可愛い顔をするお前が悪い」
「―――ふぇっ!? ボ、ボクのせい……なの!?」
とても信じられない言葉を囁かれて唖然とした。今までそんなこと誰にも言われた事がないのに、彼は平然とそんなことを言う。
でもからかわれたのだと思ったボクは直ぐに我に返り、また頬をぷくうっと目一杯膨らませた。
「じゃあかわいいのだったらみんなチュウする?」
「………いや、そうは言ってないが……」
「だって、かわいかったからチュウしたんでしょ?」
ふんっと鼻息も荒く腰に手を当てて尋ねると、煌騎はとても複雑そうな顔をする。こんな事を言うボクに呆れてるのかな……。
でも引っ込みがつかなくなってしまい、目に入るものすべてを手当たり次第に彼の前へと突き出した。
「コレは? コレかわいい? ねぇ、煌騎コレは?」
「……………………可愛くない」
ボクの対応に困り果てた煌騎は、そっぽを向いてぼそりと呟く。そしてまた反撃を喰らう前にとボクをいつものように片腕だけでひょいと抱き上げた。
一生懸命その腕から逃れようとしたけどダメで、距離が近づくともう彼の顔が見られなくなる。
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