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第179話
ボクと煌騎を交互に見た後、そう優しく尋ねてくれるけど、萎縮したボクの口はまだ硬直していて上手くは喋れない。
プルプル首を振って縋るように彼のブラウスの袖を強く握る。
それを見た和之さんは困ったように息を吐くと、ボクの頭をクシャクシャに撫で、それから対峙する煌騎の方に視線を向けた。
「……煌騎、どうしてこうなったのか経緯はわかんないけど許してやれよ。こんなに落ち込んじゃって可哀想じゃないか」
「あ~和之放っとけ、どうせこいつの方が悪いんだから。そのうち墓穴掘るのがオチだよ」
不意に後ろから声が聞こえて振り返ると、そこには何故か健吾さんの姿があった。しかも和之さんの席でみんなと一緒にのんびり朝食を採っている。
どうして彼が朝からここにいるのか不思議に思ったが、ボクの混乱も気にした風はなく彼は言葉を続けた。
「このバカ、体裁を取り繕う為にウソ吐いた挙句、思わぬ方向から反撃喰らって引くに引けなくなってんだよ」
何か知っているのか健吾さんはまるで見てきたようにそう言って、シタリ顔で煌騎の方を見る。
そしてニヤリと意地の悪い笑みを浮かべると、ボクに加勢するべくこちらに目線を向けた。
「チィ、可愛いのは何も虎子だけじゃないぞ?ほら、双子の虎汰だって同じ顔なんだからカ~ワイイぞぉ~♪ 」
「―――あっ!」
「………………………チッ」
彼の助太刀でボクは忽ち形勢逆転となり、煌騎よりも有利な立場となった。途端に彼は苦虫を噛み潰したような顔になる。
災難なのは虎汰で突然自分に話が振られ、彼の頭上にはクエスチョンマークがいっぱい飛び交っていた。
「え、なになに~? 俺チィの役に立つことあるぅ?」
「お~、あるある! とりあえず煌騎の隣に行ってみ」
事情を知らない虎汰はヘラヘラと笑いながら尋ね、健吾さんは笑いを堪えながらボクの代わりにそう答えた。
すると彼は疑問に思いながらも素直に従い、席を立つと煌騎の隣に並んだ。同じ顔をしたかわいい双子がイケメンを挟んでいる状態だ。
「………んで? 俺は何するの?」
キョトンと可愛らしく首を傾げる虎汰。その愛らしい仕草にボクはあまり深く考えず期待に胸を高鳴らせ、キラキラとした眼差しで煌騎を見る。
前を向いていて全然気づかなかったが、健吾さんはそのボクの背後で『ヤれ』と脅すように、顎を突き出し彼に合図を送っていた。
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