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第183話

疑問に思って首を傾げると斜め後ろに立つ虎子ちゃんがこっそり耳打ちして教えてくれた。何でも鮎川さんは過去にたった一度だけ、虎汰の身長の事に触れてしまった事があるらしい。 それを聞いたボクは今後一切、虎汰の前では身長の事は口が裂けても触れないでおこうと心の中で密かに誓った。 昇降口を上がってボクたちが向かったのは昨日約束した通り、彼らのお気に入りの場所でもある屋上だった。今日もいい風が吹いている。 重い扉を開けた瞬間ボクは堪えきれずに煌騎の手からすり抜けると、柵のあるところまで一直線に駆け寄った。 そして腰下まである長い髪を風に靡かせながら瞼を閉じて上を向き、外の空気を胸いっぱいに吸い込んでそれを堪能する。 「思ったより元気そうだな、チィ。やっぱり連れてきて正解だったんじゃないか?」 「あぁ、そうだな……」 そう背後で和之さんと煌騎が話してるのを聞きながら、ボクはワクワクする気持ちでこの屋上から見渡せる街並みを見下ろした。 澄み渡った青空と朝日に照らされて、キラキラと輝く街並みがとてもキレイだ。もっともっと眺めたくなる。でもここからだと隣の校舎が少し邪魔で、景色があまりよく見えない。 「う~……あ、そだッ!」 見えないなら見えるようにすればいいと考えたボクは、気合いを込めるとおもむろに金網へ手を掛けてよじ登り始めた。けれども透かさず煌騎に後ろから身体を掬い上げられる。 「こら、フェンスをよじ登るな」 「あうっ、もちょっと頑張ればボクでも登れそーだったのにぃ……」 残念な思いで恨みがましく煌騎を振り返るが、そんな顔をしてもダメだと言われてしっかりと抱き直された。すると和之さんがクスクスと笑いながらボクたちの隣に並んだ。 「チィこんなトコから無理に眺めなくてもほら、あそこに行けば幾らでも景色が眺められるよ?」 彼の指差した先に見覚えのある貯水タンクが見え、そこが昨日いた場所だと知る。ね?って優しく宥めるように顔を覗き込まれれば、渋々だけどボクはコクンと頷きそこからよじ登る事を諦めた。 「わぁ~、スゴ~い! 遠くまで見えるよっ」 煌騎に抱っこされたまま最上階に登ると、直ぐに下ろして貰ってそこから見えるパノラマの景色をボクはぐるぐると見て回った。 でもそれほど広くもない場所だったで、全部を見て回るのにそう大して時間は掛からない。

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