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第187話

不貞腐れる彼をみんながからかい始めた時、不意に下の方から男の人の声が響いた。 「ここは相変わらずバカな連中が(たむろ)しているようだな。余程の暇人とみえる……」 「―――ッ!?」 瞬時に和之さんたちの顔が険しくなり、互いに目配せしてボクの周りを囲い臨戦態勢を取る。 煌騎はボクを虎子ちゃんに預けると静かに立ち上がり、声のする方へと近づいていった。そして下を見下ろしながら静かに口を開く。 「…………何の用だ、常磐」 何の感情も篭っていない口調だが、声音には怒気が含まれている。その名を聞いてボクはピクリと肩を揺らし、辺りには忽ち緊迫した空気が漂った。 招かれざる客の亜也斗はボクの位置からではその姿すら見えなかったが、威圧感に溢れた彼の存在はどうしても消せない。 それが肌にヒシヒシと伝わり、怯えるボクを更に震え上がらせた。 「フン、何の用とはご挨拶だな。ここはお前たちクズどもの所有場所じゃないハズだが?」 「―――何だとテメッ、言いたい事があんならさっさと言えっつってんだろが、あぁッ!?」 「あんま調子ノッてると痛い目みるぞ常磐!」 「ハァ…………流星、虎汰………」 何処までもふざけたように言う亜也斗に、煌騎の両脇に控える流星くんや虎汰は今にも飛び掛かりそうな勢いで叫ぶ。 だけど煌騎は二人の名を呼ぶだけでそれを制した。 昨日店で和之さんに少し話を聞いたのだけど、彼らは学園内で絶対に問題を起こしたりは出来ないのだそうだ。 1度でも問題を起こせば即退学処分が下る。チームに所属しているというだけで、煌騎たちは問題視され厳罰に処されるという。 それは亜也斗にも当てはまることなのだが、彼はあまりこの学園に執着がないのか一向に問題行動を改めなかった。 だからか煌騎たちもほとほと手を焼いているらしい。 「俺たちは()()ではお前の相手はしない。暴れたいなら()()へ行け」 冷静に煌騎が言い放つ。けれど亜也斗がそれで納得する筈がなかった。姿が見えなくてもわかる。 彼が嘲笑うように笑みを浮かべているのが…… 怖い、怖い、怖い―――… ボクの『管理者』だった人と似た亜也斗が死ぬほど怖い。虎子ちゃんの腕の中でブルブル震えていると、彼女が透かさずボクを強く抱き締め背中を擦ってくれた。

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