188 / 405
第188話
「チィ、私たちがついてるから大丈夫だよ!」
「……う…うん、ありがと虎子ちゃん」
その言葉に幾分か救われホッと息を吐き掛けた時、彼女の声が聞こえたのかそれを嘲るようにまた亜也斗が何かを言った。
今度はボクに向けて……。
「おチビちゃん、そこにいるンだろう?なぁ、見えるトコに出ておいでよ~♪ 」
「―――ッ!?」
瞬間、身体がビクンと飛び跳ねた。あまりの恐怖に今度はガクガクと震え、知らぬ間に涙が頬を伝う。
ボクは『彼ら』の言葉には、決して逆らうことは出来ない。だって従わないとたくさんたくさん叩かれるのを、嫌というほどこの身体に教え込まれたから……。
無意識の内に震える脚で立ち上がろうとすれば、直ぐさま虎子ちゃんに止められた。
「行かなくていい! チィ、ダメよっ」
「………でも……でもぉっ……」
助けを求めるように見上げれば、彼女は力強く頷いてくれる。けれど隠しきれない緊張感が伝わってきて不安は消えてくれない。
泣きながら首を振れば、和之さんがボクの傍らに片膝をついてしゃがんだ。
「チィ、大丈夫だから……。俺たちが絶対にキミを守ってみせる。だから安心して、ね?」
そう言うと彼はふんわり笑う。
彼の言葉に押されて前を向けば流星くんも虎汰も、そしてあの朔夜さんまでもが一瞬だけど振り返ってボクに笑顔を向けてくれた。
皆のその柔らかい笑みに心の奥底で眠っていた勇気が膨らむ。だけどせっかく膨らんだその勇気も、次の亜也斗の言葉でペシャンと音を立ててものの見事に潰された。
「無駄だよ、おチビちゃん。どう足掻こうがキミは所詮飼われてたペット、飼い主がいなきゃ生きられない存在なんだから……クククッ」
「―――ッ!?………あ……ぁっ………」
「フザけんなっ、チィはペットでも何でもねぇ!!」
「それ以上勝手なこと言うとマジでブッ殺すぞ常磐ァ!」
直ぐさま流星くんと虎汰が反論してくれたけど、ボクの耳にはもう二人の声は届いていない。亜也斗の言葉だけが頭の中で木霊する。
(ボクは……ペット、だったの……?だから男の人にいっぱい叩かれたり蹴られたり、身体を好きにされたり、したの……?)
強いショックを受け愕然とした。
ボクは……人ですらなかったのだ―――…
ともだちにシェアしよう!