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第189話

「―――チィッ、奴の言葉に惑わされるな! お前は自由に生き、選択する権利をちゃんと生まれながらに持ってる!!」 「………ぁ………」 それまで無言で事の成り行きを見守っていた煌騎が口を開き、ボクにそう言ってくれた。その暖かい言葉で凍り掛けていた心が徐々に溶けていく。 縋るような眼差しで彼に目を向けると、煌騎はボクだけを見つめ強く頷いてくれた。 「その権利だけは決して手放すなっ、自由になる事を恐れなくていい。いつでも俺が傍にいると約束しただろう!」 「………う…ん……うんっ、そだったね煌騎っ」 涙でぐじゃぐじゃの顔を更にクシャッと歪めて笑い、ボクは堪らす彼の元に駆け出して腰元の辺りに抱きつき顔を埋めた。 煌騎はそんなボクを優しく受け止め抱き留めてくれる。それを気に入らないとでも言いたげに、ボクたちのいる建物の下にいる亜也斗は睨みつけてきた。 「…………ちっ、無駄だって言ってるのにホンットしつこい連中だなぁ。でもまぁいいや、今回は警告しに来ただけだし」 「ウルッセェ! 他に用がねぇならとっとと帰れ!!」 「フン、小物はよく吠えるってのはホントだな」 虎汰が間髪入れずに叫ぶ。けれど亜也斗は懲りないのかわざと煽る言葉で彼を挑発する。 それに反応しかけた虎汰の肩を、近くにいた朔夜さんが咄嗟に止めた。彼がいなかったら確実に虎汰は飛び出して行っていただろう。 それから亜也斗はまたボクに狙いを定め、こちらを向くと言葉でボクの心を縛って動けなくする。 「ねぇおチビちゃん、本当にそこにいていいの? 前の飼い主さんたちがキミを探してるよ」 「―――う?」 呼吸の仕方を忘れたように口をぱくぱくさせ、建物の下にいる亜也斗を凝視した。前の飼い主とは間違いなくボクの『管理者』だった人の事を指しているのだろう。 ―――あの人がボクの事を探してる……。 それがどういう事を意味しているのか、幼い頃から嫌というほど知り尽くしていた。それは即ち大好きな煌騎たちに危害が及ぶということだ。 人の命など何とも思わない“あの人”の事だから、きっと残忍な手口で煌騎たちは殺されるに違いない。あの日ボクを逃がしてくれようとした人と同じように……。 先ほどとは比べ物にならないくらい身体がガクガクと震え出した。もう呼吸も儘ならない。 「クククッ、お前らも命が惜しいなら早くそのおチビちゃんを手放す事だな。可愛い見た目だけど疫病神だから、そいつ」 「―――貴様ふざけるのもッ……あ……チィッ!?」

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