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第190話

怯えるボクに気を良くした亜也斗がニヤニヤと勝ち誇ったような笑みを零す。 煌騎は直ぐに反論しようとしたが、自力で立つこともできなくなったボクがその場に崩れ落ちそうになった為に、それは叶わなかった。 だからか代わりに和之さんが前に出て、上から亜也斗を見下ろして静かに睨み付ける。 「その元『飼い主』さん? とやらとお前が一体どういう繋がりがあるのか気になるトコだけど、生憎と俺たち死闘には慣れてるんでね。お気遣いは嬉しいけど余計なお世話だよ」 そう言うと彼は眼鏡を外しながらフッと笑い、そして次には冷酷なまでの冷たい眼差しで彼を睨みつけ、また口を開いた。 「チィは何があってもお前らなんかに渡さない、例えこの命が尽きようともね。そう元『飼い主』だとかいうフザけた事ぬかす屑にも伝えておいてよ」 「―――なっ!?……くっ」 あまりの屈辱に亜也斗は自身の唇を噛む。 普段の和之さんからはとても想像できないほどの気迫に、ボクは知らず煌騎の腕の中で息を呑んだ。 でもコレは彼のほんの一面にしか過ぎないのたと直ぐに悟る。だって和之さんはいつでもボクに優しかったから……。 こんな一面を知ったからって、彼を嫌いになんかなれない。それはこの場にいるんなにも言える事だった。 ボクは彼らのチームの事を何も知らない。というよりも外へ飛び出してまだ幾日も経っていないのだから、それも知りようがない。 けれど彼らはボロボロのボクを躊躇なく拾い、何も言わずに庇護してくれた。そんな彼らが悪い人のハズがないと、それだけは本能でわかる。 ボクはこんな時どうすればいいのだろう……。 「―――亜也斗ッ、そこまでだ!!」 その時、突如出入口の方から声を荒げた男の人が乱入してきた。その人は昨日も仲裁に現れたあの青い髪の男の人だ。 彼は肩で息をしながらゆっくりと亜也斗の方へ近づいていく。その表情は鬼のような凄い形相だ。 彼の傍らに近づいたと思うと、その胸倉を掴んで強引に自分の方へと引き寄せた。 「何度言えばわかるんだ亜也斗っ、学園内ではあれほど騒ぎを起こすなと言っただろ!」 「………チッ、またこいつ呼んだのかよ。芸がねぇな」 だけど当の彼は両腕を上げて頭の後ろで交差させ、面倒臭そうに顔を顰めて背ける。 そのまったく反省の色を見せない態度を取る亜也斗に、青い髪の男の人は心底呆れたという顔をした。

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