191 / 405

第191話

前回は確かに和之さんから連絡を受けて駆けつけたが、今回は下の階で偶然にも生徒会長の鮎川さんと遭遇し、彼がこの屋上に向かっているのを目撃してわざわざ知らせてくれたらしい。 そう説明するがそれでも亜也斗はフザけた態度を改める事はせず、平然と鼻で笑うと男の人に掴まれた腕を強引に払った。 「それはそれはご苦労さま! つかせっかくの余興が台無しじゃん、気が削がれたよ……。もう帰る」 くるりと青い髪の男の人に背を向けると、亜也斗は両手をズボンのポケットに突っ込んで面白くなさそうに背中を丸め、一人出入り口の方へと向かう。 どこまでも気まぐれなボスに翻弄された男の人は、深い溜息を吐くと煌騎たちに目ですまなさそうな視線を送り、小さく頭を下げると慌てて彼の後を追った。 その姿を眺めながらボクはぼんやりと思う。 今の行動にどれほどの意味があるのかはわからないけれど、もしかしたら青い髪の彼はそう悪い人間ではないのかもしれないと……。 彼に対する印象はボクの中で少しだけ変わった。だけど屋上の扉の前で亜也斗はピタリと足を止めると再びこちらを振り返り、嫌味な笑みをボクに向けたのでまたビクリと反応する。 「あー言い忘れてたけどおチビちゃん、キミの元『飼い主』さんホントはもうキミの居場所を見つけちゃってるみたいだよ?」 「――――ッ!?」 「早くそこから放れないと、また周りにいっぱい迷惑を掛けちゃうかもね?」 「………ぁ…あぁ…………」 さも愉しい事が起こりそうだと言わんばかりに喜ぶ亜也斗とは対照的に、ボクはそう言われて顔面蒼白となった。 あまりの恐ろしさから発狂しそうになるのを、煌騎の腰にしがみつく事で何とか堪える。 「根拠もねーウソ吐くな! テメェはそうやってチィを怖がらせたいだけだろがっ!!」 ボクの動揺を目にした流星くんが瞬時に頭に血が昇り、建物から何の躊躇いもなく飛び降りて床に着地すると同時くらいに亜也斗目掛けて飛び掛かる。 けれど和之さんはそれを予測していたのか同じタイミングで下へ飛び降り、寸でのところで彼の目の前に立ちはだかってその暴走を止めた。 「お前こそ一発退場を喰らいたいのかっ、奴の挑発に乗るなッ!!」 「―――くっ、……でもッ!?」 「でもじゃないっ、今は状況を弁えろ! そんなじゃ大事なものは何ひとつ守れないぞッ!!」

ともだちにシェアしよう!