193 / 405
第193話〜後少しだけ……〜
屋上で亜也斗に警告を受けてから数日が経過した。
けれどもボクは相変わらず今日もみんなの傍にるし、学園にもちゃんと屋上登校だけど通い続けている。
というのもあの日、彼が去った後ボクはみんなにスゴい勢いで説得されて、『管理者』さんの元へ戻る事を思い留まされたからだ。
どうしても不安に駆られて震え続けるボクに、煌騎は辛抱強く“大丈夫だから”と言って抱き締めてくれた。その甲斐あって震えは徐々に収まり、前向きな思考に切り替える事ができたのだ。
それ以降はみんなに余計な心配は掛けまいと、常に明るく笑顔を心掛けている。時々煌騎と和之さんが深刻な面持ちで話し合っているのを見掛けるけど、ボクは決まってそれに気付かないフリをした。
聞いてもどうせ彼らは教えてはくれないだろうし、事情を知ってしまえばまた心が揺らいでしまうから……。
ボクはズルい、
自分がいるだけで既にみんなには迷惑を掛けているのに、まだ彼らと離れたくないと思ってしまっている。守って貰う価値などボクには微塵もないというのに……。
パラソルの下で物思いに耽りながらボクは机代わりのイスに突っ伏し、今日の分の紙パックのジュースを大事にストローでちびちびと飲む。
ボクの大好きな“ちょこ”味のジュースだ。
実は健吾さんの命令でボクは一日にこの1パックだけしか、“ちょこ”味のジュースを飲めなくされていた。理由は一日に3パック以上も飲んで、そのあと鼻血が暫く止まらなくなってしまったから……。
悲しいけど彼の命令には誰も逆らえないのだから仕方がない。硬い“ちょこ”もいっこだけなら食べていい事になってるから、ボクはそれでいまは我慢している。
「あれ、もしかしてチィご機嫌斜め?珍しいな」
今日は午前中学校をサボっていた虎汰が、何食わぬ顔で屈みボクの顔を覗き込んでくる。でもそれには反応を返さず、彼と入れ違いに今度は流星くんが屋上を後にする後ろ姿を見送りながら、深い溜め息を零した。
ここ2~3日の彼らは何だか妙に慌ただしい。
何かチームの間で問題でも発生しているのか、変わらず煌騎だけはボクの傍にいてくれるのだけど入れ替わり立ち替わり、白鷲の子たちが来ては何事かを彼に報告している。
それに和之さんや流星くん、虎汰にあの出不精だった朔夜さんまでが用事とかで屋上にあまり姿を見せなくなった。
ともだちにシェアしよう!