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第194話

それはもちろん倉庫にいても同じで、前のように5人全員が揃うようなことは極端に減ってしまっている。 これで気づくなという方がムリだろう……。 確実に煌騎たちの周りで何かが起きている。もう知らないフリはできそうになかった。 ボクは上体を起こすとストローをぎゅっと噛みしめ、目の前にいる虎汰に尋ねようかどうしようかと悩む。 でも勘の鋭い彼はボクの表情をいち早く読み取ると、目線を反らしてそれとなく空気の流れを変えた。 「ところでチィ、虎子は? さっきから何処にも姿が見当たらないけど……」 キョロキョロと辺りを伺い自身の双子の片割れを探す。話を逸らされた事にボクは少なからずショックを受けるが、心のどこかでホッとしている自分もいる。 それに気づかれぬよう平常心を保ちながら虎汰の質問に答えた。 「虎子ちゃんならさっき、図書館に行くって言って出てったよ」 「―――はっ!? いや、あいつが図書館って……いやいや、ありえなさ過ぎだろ。何処のどいつだよソレ、虎子じゃなくね!?」 よほど意外だったのか素でビックリする虎汰に、ボクは苦笑気味に笑う。確かに虎子ちゃんと図書館って何だかしっくりこない。 彼女はいつも元気いっぱいで、お外で太陽の光を浴びてる方が断然似合っている。 それにそもそも彼女は暇をもて余したボクの為に、わざわざ本を借りに行ってくれているのだ。 自分もついていくと強請ってはみたが、屋上の方が煌騎もいるし安全だからと取り合ってはくれなかった。だからボクはちょびっと拗ねている。 でも安全ってなんだろ、亜也斗に対してかな? 以前は知らないけどあの日以来、屋上に上がる扉の前には何人か見張りが立ってるのを見掛けるようになったし、物々しい厳戒体制にボクは自分のことなのにあまり知らない。 もどかしい思いで床にゴロンと寝そべると、退屈な時の癖でついゴロゴロ転がった。すると監禁されていた時とは違い、鎖に邪魔されずどこまでも転がれる喜びにいつしか楽しくなってくる。 けれどそれを見た虎汰は大慌てでゴロゴロするボクの身体をピタリと止めた。 「なっ、何してんのチィッ!? ここの屋根は柵がないんだからゴロゴロしちゃダメ! 落っこっちゃうだろッ!?」

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