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第195話
「ぶーっ、だって……だって退屈だったんだもんっ」
納得のいかないボクは唇を尖らせ、控えめにだけど抗議してみる。
虎子ちゃんが図書館に行くことになった理由はこれだとすぐに悟った虎汰は、なるほどと呆れたように苦笑いを零した。
でも……、
「そっかぁ、寂しい思いさせてごめんな? けどもうちょっと、あと2~3日の辛抱だから我慢して、な?」
「…………………はい」
頭をグリグリと撫でられながらそう言われれば、ボクは頷くしかなくなる。
ムリに頷かせた感が拭えない虎汰は申し訳なさそうに顔を顰めたが、言い訳は一切しなかった。
「あ……あんたたちっ、そこで何してんのッ!?」
「―――う?」
声がする方に顔を向けるとそこには目を大きく見開く虎子ちゃんがいて、図書館から借りてきたのか胸元には数冊の本を抱えていた。
だけどその手にしていた本はバラバラと床に落ちていき、何故か驚きの顔は徐々に怒りに満ちた表情へと変わっていく。
あれ? と思い、ふと自分たちの今の体勢を思い返してみた。端から見れば虎汰がボクを押し倒しているように見えなくも……ない?
すると下で白鷲の子たちに報告を受けていた煌騎が戻ってきて、ハシゴを登る彼とバッチリ目が合った。
暫し不穏な空気が流れた後、ほんの数秒間だけ放心していた虎汰が慌てて覚醒しボクの上から飛び退く。
「―――ち、ちちち違う!? 断じて違うぞッ、煌騎も虎子も違うからな!? これは言うなれば事故だからッ!!」
「何がどう違うって言うのよ!? 純真無垢なチィに不埒なマネしたら私が許さないんだからねッ!!」
「―――ちょっ、待てって虎子!? 違うってばッ!」
物凄い勢いで言い訳を始める虎汰に、虎子ちゃんは問答無用で蹴り掛かる。
しかし咄嗟の蹴りにも彼は瞬時に反応し、妹のスラリとした長い脚は細い腕1本だけでがっちりとガードした。
それでも虎子ちゃんの攻撃は止まない。
「あーもうっ、だから聞けって! チィが暇をもて余して床をゴロゴロ転げ回ってたからっ、俺は危ないって言って止めてただけだよッ!!」
「―――へっ!? そ……そうなの!?」
確認の為に虎子ちゃんがバッと此方を物凄い勢いで振り返る。そのあまりの形相に正座して事の成り行きを見守っていたボクは、すぐさまコクコクと頷き返した。
それを見た途端、彼女は崩れるようにへなへなとその場へ座り込んだ。
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