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第196話
「もうっ、ホントびっくりしたじゃない!」
「うーっ、虎子ちゃんごめんね?」
虎汰が詳細を話し終える頃には彼女は脱力し、両手を床に付いて項垂れていた。どうやら虎子ちゃんはボクが本気で虎汰に襲われていると勘違いしたようだ。
彼女にスゴく心配を掛けてしまったとボクは深く反省する。ショボンと落ち込みながら顔を覗き込めば、虎子ちゃんに身体を引き寄せられてぎゅむ~っと抱き締められた。
ちょっと苦しかったけど今は我慢!
「チィが謝る事じゃないわ、私が勝手に早とちりしただけだもの。でも気を付けてよ? 周りは年中発情期のヤローばっかなんだから!」
「う? う…うん、わかっ………い、いひゃいお虎子ひゃん!? (い、痛いよ虎子ちゃん)」
「あんた全然わたしが言った事わかってないでしょ」
彼女の忠告に素直に頷こうとしたら、何故か両頬を思いっきり抓られた。理由を尋ねても虎子ちゃんは教えてくれず、ボソッと「お子さまにはまだムリか」って呟いてまた項垂れてしまう。
ボクの身体をまだキレイなままだと信じて疑わない虎子ちゃん……。
もうとうの昔に穢れてしまっているのに何を言っているのだろうと首を傾げながら、痛む両頬を自分の掌でスリスリしていると後ろから煌騎が両脇に手を滑り込ませ、ボクを軽々と抱き上げた。
「チィ、いい子で待ってろと言ったハズだが?」
「あ、煌騎! お帰りなさい♪ もう大事なお話は終わったの?」
今更ながら煌騎の存在を思い出したボクは、嬉しさのあまり彼が苦笑いで何事かを呟いたのにも気づかず、尻尾を振る勢いで首元に抱きつく。
虎子ちゃんに直ぐさま「あんたは言った傍からぁ!」と眉間に皺を寄せられたが、彼女が何を心配しているのかわからなかったので気にしない事にした。
だって煌騎はボクが嫌がる事はしないもの。
時々思い出したように不意打ちのチュウはされるけど、ボクがイヤじゃないから……いいよね?
「ははっ、虎子諦めろ。チィには誰も敵わないって」
横で物凄く目くじらを立てる虎子ちゃんに、兄である虎汰がまぁまぁと呆れた顔で宥める。
そのお陰か彼女の機嫌が何とか直ったので、とりあえずボクたちはパラソルの下へと移動した。
「そういえば今日は晩飯どうすんだ? 今夜は和之、倉庫に帰って来ないんだろ?」
「―――う?」
不意に思い出したようにそう話を切り出した虎汰に、周りの誰よりも先に反応したのはボクだ。
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