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第197話

今まではみんながどんなに慌ただしく動こうと、チームのツートップである煌騎と和之さんは表立った行動を控えていた。 何故なら彼ら二人が動けば周りから余計な詮索を受け、下手をすればこの機に乗じて善からぬ動きを見せる輩が現れるかもしれないからだ。 その程度で潰せるほど白鷲は脆くないけど、チーム内に不協和音を生じさせるワケにはいかない。 だからトップの二人は何かあっても極力動いてはいけないのだと、つい2日ほど前にボクは虎子ちゃんからこっそり教わったばかりだった。 それなのにどうしてこの時期に……? 何だか嫌な胸騒ぎを覚えて縋る思いで煌騎の顔を見上げると、彼はそんなボクを落ち着かせるように大きな手で頭を撫でた。 「心配するな、あいつはただ実家に帰るだけだ。俺と同じで久しく帰ってなかったからな、家の者に招集を掛けられたらしい」 「…………じっ…か……?」 オウム返しのように同じ言葉を繰り返すと、彼は穏やかな表情でコクンと頷く。聞けば和之さんの母方の家は代々、法律関係のお仕事に属する者を多く輩出する由緒正しき家柄なのだそうだ。 それだけに彼も例外に漏れず将来を期待された重圧を背負わされていて、幼い頃から厳しく躾けられ人として当たり前にあるハズの自由を、彼も知らずに生きてきたとのこと……。 だけどそんな和之さんにも唯一気に掛けてくれる人がいて、父方のお祖父さんが高校での3年間は彼に自由を与える事を何とか親族に確約させたのだという。 でもそのお祖父さんも最近ではあまり体調が優れないらしく、普段なら無視する招集も今回は従う事にしたらしい。ボクは和之さんが複雑な家庭環境にいると知って、少し落ち込んでしまった。 いつも周りに気を配って何かと世話を焼いてくれる彼に、そんな仄暗い家の事情があったなんて知らなかったのだ。暗い顔をするボクに煌騎は頭を撫でる手を強め、くしゃくしゃと前髪を乱す。 「これは和之自身の問題だ。お前が気に病む事じゃない」 「………う…うん、そだ…ね……」 彼の言葉に素直に頷き、でもこっそりとバレないようにボクは溜め息を吐いていた。煌騎は元気づけようとしてくれたのだろう。 けれど守られているばかりの自分は彼を心配する資格すらないのだと、そう言われているような気がして更に落ち込んでしまった。

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