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第199話
亜也斗はまるでボクたちの行動を全て把握しているかのように、こうして警備が手薄になってる時に限って現れる。
今日はいつも使っている屋上に最も近いトイレが故障中だった為に、仕方なく下の階まで足を運んだところを彼と遭遇してしまった。
本来なら日常と違うイレギュラーな事が起これば直ぐに煌騎へと連絡を入れ、応援を呼ぶかそのまま屋上に戻ってくるよう言われていたのだけど、生憎ボクの尿意は待ってくれず漏れる寸前だった。
お漏らしにトラウマがあるボクはそれだけはイヤだと涙目で訴えると、ならすぐに下の階へ応援を寄越すという指示が降りて、ボクらも周りに警戒しつつ下の階に向かう事になったのだが……結局こうなった。
こんな事ならトイレなんか我慢すれば良かったと後悔するが、それはあまりに今更で既にもう遅い。だけど意外にボクはそれほど緊張してはいなかった。何故なら……
「―――亜也斗ッ、また授業を勝手に抜け出したな! 今日という今日は許さないぞ!!」
お決まりのように彼のお目付け役の吉良さんが、間を置かずにやってくるからだ。
ちなみに彼の下の名前はまだ知らない。
亜也斗の身柄を瞬く間に確保するとこちらを向き、微かに笑んで彼は潔く頭を下げる。
「遅くなってすまないっ、昼から姿が見えなくてずっと探していたんだが……」
「ううん、だいじょぶだよ! 亜也斗、ついさっき来たばっかりだからっ」
彼がすまなさそうに謝るのでボクは手と頭をプルプル振って大丈夫だと伝えてあげた。
すると前にいる虎子ちゃんが、そんな事わざわざ教えてやる必要はないのにと呆れた声を漏らす。
和之さんにも彼だけは絶対に信用してはいけないと忠告されているけど、こう何度も助けられていると実はいい人なのでは?とか思ってしまう。
「ホントお前マヂでなんなんだよっ、この間から俺の邪魔ばっかしやがって!!」
首根っこを掴まれた亜也斗がバッと乱暴に吉良さんの手を払う。
けど観念したのかこれ以上は何もしないと軽く両手を上げ、ジェスチャーでそう示したので彼も無理に拘束しようとはしなかった。
「何とでも言えっ、校内では絶対に問題は起こさせないからな!!」
「はんっ、偉そうに! どうせ今回も薫ちゃんから俺の居場所を聞き出したんだろがぁッ、自分じゃ何もできないクセに偉そうな口聞くんじゃねーよ!!」
「―――なんだとッ!? もっぺん言ってみろッ!!」
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