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第201話
本能的に危険を察知したボクは慌てて虎子ちゃんの元に逃げようとしたが、そんな隙も与えないほどの速さで彼に捕らえられてしまった。
「や、やぁっ!? 虎子ちゃんっ、助けて~」
優しい笑みに見えたのは幻だった。間近で見た煌騎の瞳は少しも笑っていなかったし、ボクの身体を拘束する腕もいつもより強引で強い。
腰をぎゅっと抱かれそのまま抱き上げられれば、何故か安堵の表情を浮かべた彼の面差しとぶつかった。
その時になってようやくボクは、煌騎にたくさんの心配を掛けてしまった事に気づく。
申し訳のなさに反省の意味も込めてピタリと抵抗を止め、彼の腕の中でしゅんとなりながらもお仕置きを受ける覚悟を決めた。
それを見た煌騎はちょっと困ったように表情を崩す。
「本気にするな、冗談だ……」
「う?………んと、んと……?」
怒られる事を覚悟していたからか、ボクの身体からは一気に力が抜けた。
すると背後で堪えきれないというように虎子ちゃんが爆笑し出す。
「もうっ、当たり前でしょ? チィには特に激甘な煌騎くんが罰なんか与えるワケないじゃない♪」
「あ、そっか……煌騎はとっても優しいもん、ボク殴ったり蹴ったりしない。痛い痛い…しない、良かったぁ♪」
「……………チィ………」
そう言った途端二人は驚いたように息を呑み、そして次には深く後悔の色を滲ませながら顔を歪めて言葉を失った。
ボク何かおかしなこと言ったかなぁ……。
だけど心の底から安心したからか、ニコニコしながら煌騎の首に腕を回し、純粋にブタれない事を喜んでいた。
「―――煌騎ッ、そっちにチィいたかっ!?」
隣に立つ虎子ちゃんに頭をいい子いい子して貰っていると、後ろの廊下から虎汰が転げるように走ってきた。
けれど既にボクが煌騎の腕の中にいるのを目で確認すると、力なくその場にヘナヘナと崩れ落ちる。
「良かったぁ~、もうどこ探してもいないから誰かに連れ去られたのかと思ったよぉっ」
「あっ、下の階はおトイレ2つあるから……。ごめんなさい虎汰、それから煌騎もいっぱい迷惑かけちゃった」
どうやら虎汰は2つある内のもう片方のトイレへ、ボクを探しに行ってくれてたらしい。彼のあまりの憔悴ブリに申し訳ないという気持ちが募り、二人にペコリと頭を下げた。
狙われているのは何も亜也斗だけではなかったのだ。ボクの元『管理者』さんも何処からか浚う隙を狙っている。
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