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第202話

言い知れない不安に苛まれ俯いたままでいると、煌騎に大きな掌でガシガシと頭を撫でられた。 「心配するな、お前は俺が必ず守る。だから何があっても傍を離れるな」 そう言って確認するように顔を覗かれて、ボクは躊躇いながらもコクンと頷く。でも本当にこのまま彼に頼ってていいのだろうかと不安になる。 初めて彼らと出会った日の夜、優子さんのお店で話していた皆の会話が頭に浮かんだ。 あの時はお腹がいっぱいになって直ぐ眠りに落ちたけど、本当は少しだけまだ意識があった。そして偶然にも『管理者』さんの正体を知ってしまったのだ。 ボクを長い間地下室に閉じ込めていた『彼』の裏の顔は、人身売買を生業とする闇の組織の人だった。 身寄りのない子どもや家出などで身元が割れない女性を拉致し、海外のブローカーに高値で売り飛ばしているらしい。 警察内部でも随分と前からその事を嗅ぎ付け、秘密裏に捜査を続けていたようなのだけど彼のバックについてる者が妨げとなり、調査が思うように進展しないでいたという。 国家の調査機関でも迂闊に手を出せないほどの人物、といえば政治関係者しか思い浮かばないと和之さんが言う。それもかなりの大物……。 ―――そんな話を彼らはしていた。 だとしたらこのまま彼らを巻き込んでもいいのだろうかと迷う。ボクならきっと恐ろしくて逃げ出してしまう。なのに煌騎たちはボクを必ず守ると約束してくれた。 早く………早く、決断しないと……。 彼らに今以上の迷惑を掛ける事になってしまう。でもこの幸せを手放すにはあまりにここは居心地が良すぎた。 特に煌騎の腕の中は日だまりのように暖かく、涙が出るほどの幸福感をボクに与えてくれる。 だからそこから抜け出すにはかなりの勇気が必要だった。 (ごめんなさい、後少しだけ……。もうほんの少しだけでいいから、彼らの傍にいさせて下さい……) ボクは誰ともなしにそう心の中で唱えた……。

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