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第205話

その音に3人が同時にピタリと動きを止めた。 音の正体は隣に立つ朔夜さんのズボンのポケットに入っているスマホだ。 彼は緩慢な動作でソレを取り出すと、首を傾げながら画面をタップして右耳に当てた。 「……あぁ、どうした和之。お前が電話してくるなんて珍しいな……えっ? いや、煌騎は今この場にはいないが……」 「なぁんだ和之かよ、見回りに出てる流星かと思ってちょっと焦っちゃったじゃんかよっ」 どうやら電話の相手は和之さんだったらしく、朔夜さんの表情が一瞬だけど柔らかく緩む。それに安堵した虎汰は即座に興味をなくし、一気に高まった緊張を解こうとした。 けれど何か様子がおかしい。スマホを握る彼の顔色がみるみる青くなっていき、何かあったと瞬時に悟った虎汰はまた身を乗り出して聞き耳を立てた。 「なん…だって、流星が……刺されたっ!?」 「―――えっ、」 朔夜さんの口から紡がれた言葉は信じられないものだった。皆が驚愕する中、瞬時に動いたのは虎汰だ。 立ち上がるとボクらには目も触れず、物凄い速さで部屋を飛び出していく。 「―――待て虎汰ッ、早まるな!……クソッ、和之すまない。あのバカ何も聞かずに突っ走って出ていってしまった。……あぁ、わかってる!」 直ぐさま朔夜さんが止めようと声を張り上げるが、虎汰はそれには見向きもしなかった。ただ真っ直ぐ前を向いたまま、鋭い眼光をしていたように見える。 ボクはその間なにもできず、呆然とその場で立ち尽くすことしかできなかった。でも頭の中では先ほど朔夜さんが発した言葉が何度も木霊する。 『―――流星が刺された……』 それがどういうことか幾ら無知なボクでもわかる。手足がぶるぶると震え、腰も抜けて床にぺたんと座り込んでしまった。 するといつの間にか通話を終えた朔夜さんが傍らに膝を着き、そっとボクの肩を抱き寄せてくれる。 「心配するな、いま現場に和之が向かってくれている。虎汰の馬鹿も向かったようだし、流星は二人に任せとけば何も問題はない」 「……ホン…ト?……流星くん……死な…ない?」 「縁起の悪いことを言うな、大丈夫に決まってるだろう? アイツは見た目通りの不死身だからな」 口端を上げつつ彼は真面目な表情でこくんと頷く。真実味を帯びるそれを見て漸く落ち着きを取り戻したボクは、震えも止まりぎゅっと朔夜さんの胸にしがみついたのだった―――…。

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