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第206話
カチカチカチ……
静かに時間だけが過ぎていく。
いつもあれだげ賑やかだったリビングも今はボクたち二人以外に誰も居らず、しんと静まり返ったままで寂しさをより増幅させる。
ボクも朔夜さんも言葉は一言も発さず、とりあえず三人掛けソファに腰を落ち着けて寄り添っていた。
(―――嫌な胸騒ぎがする。まだ何かが起こるような気がしてならないのは、どうして……?)
不安で胸が押し潰されそうになるけれど、いま取り乱したところで皆に迷惑を掛けるだけになるのだと、ボクは必死に自分自身へ言い聞かせる。
とその時、
―――ガシャンッ!!
下の階で大きな物音が響く。それと同時にたくさんの男の人の雄叫びと怒声が聞こえてきた。
突然の事に驚いてボクは直ぐさま俯いていた顔を上げ、隣の朔夜さんの顔を仰ぎ見る。
「―――チッ、やっぱり狙いはこっちの方だったか……」
そう言って彼は顔を顰めると立ち上がり、ボクの腕を掴むと引き摺るようにして歩き出す。
そして寝室の扉を乱暴に開け放つと、そこへ投げ込むようにボクの身体を部屋へ押し込んだ。
「チィはそこにいろ! 扉を閉めたら中からカギを掛けて俺がいいと言うまで絶対に出てくるなっ、いいなっ!!」
「う?……うん、でも……」
戸惑っている間に朔夜さんは部屋を出ていってしまい、それから声を張り上げて「早くカギを閉めろ!」と外から指示を出す。
ワケが分からず混乱した上、怒鳴られた条件反射でボクは言われるまま扉に施錠をした。胸の鼓動が激しく鳴る。
これから何が起こるのかわからない恐怖と、暗闇の部屋の圧に呑まれて呼吸がままならない。
ボクをひとりにしないでと叫びたいのに、喉が萎縮して声にはならなかった。
胸元をぎゅっと握り締めながら呆然とその場に立っていたが、何気に振り返った背後の闇が怖くて奥の隅に蹲る。
(怖い……煌騎ぃ、怖い…よぉ。ねぇ、いま何が起こってるのぉ? 早く、帰ってきてぇ……)
何も縋るものがない為、ボクは自分の腕を掻き毟るように抱き締めた。
力の加減ができなくて自分の爪で己の肌を傷付けたが、動転していてそれにも気づかない。
ブルブルと震えが止まらず、心の中で懸命に煌騎の名を呼んだ。
(……煌騎はどして傍にいないのぉ? もうボクのこと、いらなくなっちゃったのかなぁ。ボク……何もできないからぁ?)
ポロポロと涙を流し、自分の何がいけなかったのかを探した。でもそんなのいっぱいある。
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