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第211話〜謀られた策略〜(和之side)
「―――不破さんっ、こっちですッ!!」
緊迫した空気が流れる街角のとある路地裏で、俺は武闘派である流星が率いる特攻隊メンバー唯一の頭脳派、仰木 大地 に呼び止められた。
辺りは騒然としていてパトカーも何台かチラホラと見える。現場は既に警察官によって封鎖されており、私服や警官 が忙しなく中を彷徨いていた。
人の波を縫って野次馬の中から抜け出すと、俺を呼び止めた男の後を追って別の裏手路地にするりと身を潜める。
「陣馬さんは都内の病院に運ばれて治療中との事ですが、今は安定していて美月さんが付き添ってくれています」
「さすが虎汰だな、もう病院に着いていたのか。で、安定しているという事はあいつ命に別状はないんだな?」
人目を避けるように肩を並べながら確認の為に問えば、そいつは緊張した顔を滲ませつつも強く頷く。
そして詳しく状況説明をしてもいいか目で俺に乞う。それに直ぐさま頷き返し促してやると、目の前の大地は額の汗を拭いながらも口を開いた。
「8時過ぎくらいに俺ら漸くサラリーマンがボコられてる現場に遭遇して、途中までそいつらと応戦していたんですが……いきなり横ヤリが入ってきて、不意を突かれてしまったんです。ホントすいませんっ」
「横ヤリ……? 誰だ、複数か……」
頭を下げる大地を無視して首を傾げ尋ねると、彼は頭をブンブンと横に振る。
そして悔しそうに拳を作りもう片方の掌をパシッと打ちつけて怒りを顕にした。
「あのヤローですよっ、蛇黒No.2の吉良 悠真ってヤツ! アイツがいきなり背後から襲って来やがって……クソッ」
大地は興奮しながら説明するので話す内容はほぼメチャクチャだ。だが根気強く質疑応答を繰り返して大体の経緯は把握できた。
吉良は始め味方する振りをしてこいつらに近づき、完全に油断したところを見計らって流星を後ろから刺したらしい。
俺たちは数日前からある確信を持って、チームの連中を市街に巡回させていた。いま世間を騒がせている襲撃事件、あれは間違いなく蛇黒の仕業だ……。
しかし襲撃犯は覆面をしており、目撃者も少ない事からどの証言も犯人の特定には繋がらず、警察の捜査は思っていた以上に難航し手こずっていた。
それならば奴らを潰す良い機会だからと、チームを挙げて俺らが襲撃犯を捕まえればいいという極論に達したのだ。(勿論言い出したのは流星だが……)
そして今夜、首尾良く流星が襲撃犯と遭遇し、思惑通りサラリーマンをボコッていた連中が蛇黒のメンバーだったと裏付けが取れた。
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