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第212話

だが途中で吉良が介入し、自身のチームの事だから後始末をさせてくれと申し出たので仕方なく任せてみたところ、不意打ちを喰らったと大地は言う。 「あのバカは……っ、だからあいつはまったく信用できないから気をつけろと言ったのにッ!!」 「スミマセンッ、俺もチィさんが珍しく怖がってなかったので奴のコト信用しきって……油断してましたっ!!」 勢い良く頭を下げる大地に俺は冷ややかな目を向ける。ーーが、腹立たしいが既に起きてしまった事は仕方がない。頭を切り替えて迅速に策を練らなければならなかった。 ―――これには絶対に何か裏がある。 「あの……ところでそのチィさんは今、どなたが面倒を見てるんですか? 確か今日は白銀さん、鷲塚の屋敷に呼ばれてるんですよね?」 「……なん……だと!? 俺はそんな話一言も聞いてなっ――そうか、そういう事だったかクソッ!!」 先ほど朔夜に電話した際、煌騎は“いま”はいないと言っていた。やっと見えない線と線が繋がって俺は愕然とする。吉良は始めからこれを企み、虎視眈々と狙っていたのだ。 獲物が罠に掛かるのを舌舐めずりしながら、時にはピエロのように道化となって……。 ―――奴の狙いは十中八九チィで間違いない! チィから亜也斗を遠ざける事でチーム内での信頼を勝ち取り、こちらの内情も手に入れていた節がある。 なら今夜が絶好の機会だったわけだ……。 大地の話が本当なら煌騎はいま不在中で、見回りをしていた流星を病院送りにする事で普段から一緒にいる事が多い虎汰も、簡単にチィから遠ざける事ができた。 そして俺が実家に呼び出されている事を事前にリサーチしていたなら……、そこまで考えてハッとする。 いま溜まり場にいるのはチィと朔夜だけだッ! 外壁はチーム随一の武闘派の連中が固めているが、戦闘狂の亜也斗が主軸となって動いているなら時間稼ぎにはなってもあまり意味がない。 「―――大地ッ、急いで人を集めろ! 掻き集められるだけ掻き集めていつでも動けるようにしておけ!!」 「は、はいっ! わかりましたッ!!」 俺の醸し出す空気で伝わったのか、大地は緊迫した面持ちで返事をすると慌ててその場から立ち去り、夜の街へと消えていった。 その姿を見送る間もなく俺も次に行動を移す。 先ずは煌騎にこの現状を知らせなければならない。だが今あいつが鷲塚組の屋敷にいるのであれば、ちょっとやそっとでは連絡が取れないだろう事は分かりきっていた。 スマホは外部と遮断する為に取り上げられているだろうし、また同じ理由で屋敷に連絡しても取り次いでは貰えないからだ。 ―――しかし手ならまだ他にもある……。 ニヤリと笑うと俺はある小道具を用意しに、鷲塚の屋敷がある方向とは逆の道に脚を進めた。

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