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第216話
「―――白銀さんっ、ご無事でなによりですッ!!」
鷲塚の屋敷を抜け出し追っ手をどうにか撒いた俺は、倉庫へ向かう前に和之の言っていた大地に連絡を取った。
しかし倉庫の周辺はまだ親父の放った組員が何人か見張っているらしく、奴らに見つからずに中へ入るのは至難の業だと言うので、少し時間を置く為に此処から数キロ先にある寂れた古い港で大地と落ち合う約束をする。
そして俺がいない間に起こった一連の流れを、掻い摘んでではあるが大まかに報告を受けた。
「フンッ………やってくれたな吉良」
全てを聞き終え俺は忌々しい思いでそう呟く。腸 が煮えくり返りそうなほどの抑えきれない怒りが、フツフツと身の内を焦がしていったが今ここで“それ”を大地相手にぶつけても仕方がない。
それにどうせ殺 るなら直接本人にその“お礼”をさせて貰わなければ、どうにも俺の腹の虫が収まらなかった。だが所詮あいつはただの駒……。
おそらくは今回の親玉だろう愛音には、いずれまた大きなお灸を据えてやらなければならない。
「…………で、今の状況は?」
燻る怒りをなんとか鎮めチームの現状を尋ねると、大地は俺に頷き事細かに説明していった。
流星は都内の病院で治療後、警察から事情聴取を受けているらしいがそれは怪我の様子を診ながらという事なので、まだ余計な事は喋っていないとのこと。
奴に付き添っていた虎汰は俺と和之が不在の為いまは溜まり場に戻り、混乱したチームの者に指示を出してくれているらしい。
亜也斗襲撃の際に負傷したチームの奴らは、既に駆けつけた健吾が現 在 も治療に当たっている。
その怪我人のリストには朔夜の名も入っていて、亜也斗と長時間ヤリ合ったせいで見た目以上にボロボロで、健吾が言うには即入院が必要らしいのだが本人は頑なにそれを拒んでいるらしかった。
―――朔夜は自分の所為でチィが連れ去られたと悔やんでいるのだろう……。
元よりあいつは非戦闘員だった。頭脳を買われてウチのチームに入ったのだからそれは当たり前で、誰ひとりとして奴を責める者などいなかったのだが、それでも朔夜自身は非力な自分が何より許せないのだ。
俺が油断を見せチィの傍を離れてしまったが為に、あいつのなけなしのプライドまでズタズタにされてしまった。
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