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第218話〜混沌の坩堝〜(健吾side)
―――いったい何がどうなってやがるッ!?
深夜に叩き起こされて白鷲の溜まり場に来てみれば、大勢の怪我人と何者かに襲撃された形跡が其処彼処にあった。
只ならぬ雰囲気にある程度の事態は把握したものの、肝心のチィの姿が見えなくて俺の不安を否応なく掻き立てる。
とりあえず一番の重傷者がいるという場所まで案内されたが、そこには満身創痍でソファに横たわる朔夜の姿があった。
それを目にして漸く俺はすべてを理解する。
チィは何者かに攫われたのだと……。
「―――何やってんだよっ、煌騎はッ!? ナイトさまはこんな時間に何処行きやがった!!」
相手が怪我人だという事も忘れ、俺は朔夜の胸ぐらを乱暴に引っ掴んで前後に揺すった。それを見た周りの連中が慌てて止めに入ったが、それでもその手を止めずに奴を身体を揺さ振り続ける。
すると朔夜は俺の腕を掴むと一瞬だけキッと睨み、それから顔を背けて心底悔しそうに顔を顰めて力なく俯いた。
「すま……な…いっ、俺がもっと……しっかりしていれば……こんな事にはっ」
「―――ッ!? す……すまんっ、俺も取り乱した。お前は怪我人だっていうのに……先ずは治療だな、話はそれからだッ!!」
逸る気持ちを落ち着け労るように奴の肩をポンポンと叩けば、朔夜は傷に響くのか更に顔を顰めるので不謹慎だが俺は笑ってしまう。
すぐさま奴にはギロりと冷たい目で睨まれたが、知らぬ顔で治療に取り掛かった。
「俺の怪我なんか後回しでいい! それより早くっ、早くチィを助けに行かなければっ―――…ぐぁッ!?」
「治療が必要かどうかは医者の俺が決める事だ! 素人のテメェは少し黙ってろ!!」
無理に動こうとする朔夜を制し、半ば強制的にソファへとその傷だらけの身体を横たわらせた。
また不服そうに朔夜には睨まれたが俺の仕事に対する信念を元から知っているからか、または言っても無駄と悟ったのかは知らないが、一応は大人しくなってくれる。
とりあえず外傷の応急措置を済ませ、臓器損傷の疑いがあるこいつを病院に搬送させるべく段取りを取ろうとしている所へ、連絡を受けたのだろう虎汰がやって来た。
「―――おいっ! 朔夜が負傷したって本当かッ!?」
ったく、うるっせぇ奴が来やがった……。
俺は眉間に皺を深く刻んで振り返り、ドタドタと無遠慮に室内へ入ってきた虎汰を容赦なく睨み付ける。
「うるっせぇ! 傷に障るから静かにしてろっ!!」
「あっ、なんだ健吾さん居たんだ! 良かったぁ……」
虎汰の奴は俺の顔を見るなりホッと息を吐く。だがいつでも何処でも騒がしいこいつがじっとしていられる筈もなく、朔夜が身を沈めるソファに駆け寄るとその横へ陣取ってしまった。
もうこいつの存在は邪魔でしかないので、俺は透かさずその背中に蹴りを1発お見舞いしてやる。
「そこは診察の邪魔だっつーの、向こうへ行ってろこのクソガキがぁッ!!」
すると虎汰は暫くブーブーと文句を垂れていたが、本気で邪魔だと悟ったのかスゴスゴと部屋の隅へと移動した。
しかし朔夜の容態がやはり気になるようで、時折チラチラとこちらの様子を窺っている。
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