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第219話
「ハァ……お前が此処でする事は何もねーよ! こんなトコでウダウダする暇があンなら下行って不在中のトップの替わりに陣頭指揮でもしてろ!!」
煌騎と和之が揃って不在の為に今やチーム全体の指揮系統は乱れ、混沌の坩堝と化していた。
それを迅速に纏め上げ、混乱を鎮めなければならない。だがそれが出来るのは今、虎汰を於いて他にいなかった。
「しっかりしろ! いまチーム存続がお前の肩にのし掛かってんだぞ、分かってんのかッ!!」
もしこの期に乗じて他のチームからも襲撃を受ける事態になれば、8代続いた白鷲も終わる。気を引き締める為に俺は敢えて虎汰を焚きつけてやった。
このままでは報復に走る者も出兼ねない。それ程までにいま倉庫内は……いや、チーム全体が大きく揺れていた。
とにかくこいつらにはボーッとしている時間などありはしないのだ。
俺の叱責が効いたのか漸く締まりのない顔だった虎汰の顔つきが神妙になり、"分かった”とだけ返すと部屋を飛び出していった。
それを黙って見送ったあと深い溜め息を吐いて振り向く。
「ハァ……しかしマジでこんな時に煌騎は何してんだ? 確か和之は実家に帰るとは聞いていたが……」
「煌騎は…親父さんに、緊急の用だとかで呼ばれて……出ていった……。和之はおそらく……っ、今その救出に……ハァハァ」
俺が愚痴るように呟くと、先の治療で気を失っていたハズの朔夜が目を覚まし、切れ切れにだが言葉を返してくれた。けれども内部の傷がかなり痛むのだろう……。
眉間に深く皺を寄せ、平気な顔を装いながらもその実それはまったく隠せていなくて、顔色は真っ青でとても辛そうだ。
いい加減なんの牽制だかプライドだか知らないが、医者の前でそんな演 技 したって通用しないんだって事を学習して欲しいもんだが、こいつらには話したって無駄なんだろうな……。
諦めの境地でまたもや俺は深い深い溜め息を吐く。
「なら、二人がここへ到着するまでは待ってやる。だが後は大人しく医者の俺の言うこと聞いて病院に搬送されろよ? ったく、面倒くせぇ手間かけさせやがって……」
「ん……っ……ハァハァ………ありがとう、健吾さん」
脂汗をダラダラと滝のように流す朔夜は、嬉しそうにニッとはにかんで笑うとまた瞼を閉じ、粗い呼吸を繰り返した。
見た目スラリとしていて背は高いが筋肉のないこいつでも、白鷲幹部としての矜恃があるんだなと妙に感慨深く思いながら、心の中でチームの柱である二人の早急な到着を願った。
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