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第221話

少しくらい我が儘を言ってもバチは当たらないと思うの。誰だって権力を手に入れたなら、1度は使ってみたくなるのが人の(サガ)というものでしょう……? まぁ私の場合は1度では済まないけれど、もう我慢なんかしないと心に決めている。 だってどうしても『彼』が欲しいんだもん。 その為にも先ずはあの目障りな子を始末しなければ……。 「しかしあの吉良がよく言う事を聞いたな。一体何を使ってあいつを従わせたんだ?」 大して興味もないクセに神埼は偉そうにそう聞く。でもこれからの計画には絶対の自信がある私は、ニヤリと口角を上げて笑った。 吉良さえしくじっていなければ、まだまだこちらにも挽回のチャンスはあるのだ。 一転して勝ち誇ったように微笑む私に、訝しむ神埼は眉を潜めてこちらを見遣る。 「フフ、そんなの簡単よ。あの人、年の離れた可愛い妹がいるの。それはそれはもう本当に愛らしい……ね」 「くくくっ、そりゃ面白い! まったく、お嬢らしいよ。それなら奴もしくじる訳にいかないだろうしな」 私の企みがわかったのか、神埼は微かに笑うと後はもう興味がないと言わんばかりに踵を返し、じゃあなと部屋を出て行こうと襖に手を掛けた。 だけどふと何かを思い出したのか、顔だけをこちらに向けて口を開く。 「せっかく夜な夜な睡眠時間を削ってまで考えた計画だ。くれぐれも亜也斗に潰されないよう奴には目を光らせておけよ? アレは直ぐに暴走するからな」 「―――言われなくてもわかってるわよっ!」 余計な一言にまたクッションを手に持ち振り返るけど、神埼はさっさと退室した後でもうそこには誰もいなかった。 ―――あの男は本当に腹が立つッ!! いつかすべての権力を手に入れたら、絶対一番にあいつを始末してやるのにと考えるけど、悲しいかなそれも叶わない。 あいつは私の秘密を多く知り尽くしている。それに“あの人”の手駒という事もあって、なかなか手が出せないのだ。 「でも……まぁいいわ、私は煌騎さえ手に入れば後は何もいらないのだから……」 その彼ももう直ぐ手に入る。邪魔なあの子さえいなくなれば、今度こそ怖いものはなくなるのだから……。 私はクスリと微笑むと(おもむろ)に机の上に放置していたスマホを手にした―――…。

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