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第224話
彼は人に指図されるのが何よりも嫌いらしい。
最もな理由を並べ立てて逃れようとするのに大して、それらを聞く体制にない吉良さんは溜め息混じりにまた口を開く。
「お前がしたくないならそうしろ、だがその条件をクリアしないと“返品”しなければならなくなるぞ」
「えーっ、それは困るなぁ。このおチビちゃんは今までの中で1番愉しめそうな“オモチャ”なのに……」
「ならちゃんと条件を飲め、そいつの“所有者”になりたいならな。あちらは妥協するつもりはないらしい」
声を荒げたのは最初のほうだけであとは無邪気な様子を見せる亜也斗に、言い聞かせるよう彼はピシャリと言い放つ。
まるで普段の会話と何ら変わらない彼らのそのやり取りに、ボクは知らず恐怖を掻き立てられた。
この二人にとってもこれが日常なのだ……。
ボクに拒否権なんてものは初めからないのだから逃れる術はない 。堪えるように目を瞑り、二人の会話が終わるのをただ黙って聞き流すしかなかった。
「んーでも俺、男抱けないしなぁ……。あ、そうだ! 吉良がおチビちゃんの相手してあげなよ!!」
名案だと言わんばかりに亜也斗が両手を合わせてそう高らかに言う。しかしそれを聞いた途端に彼の表情が曇り、彼のその眉間にも深い皺が刻まれた。
「悪いが……俺も男は抱いた事がない」
「え~でもおチビちゃん女顔だし大丈夫、イけるよ! それに吉良は俺の指示に従ってればいいから問題ない。要はあれでしょ、男同士のAVを撮ればいいんじゃん♪」
「……………………………ハァッ」
簡単でしょ? と、どうあっても譲らない主の提案に諦めたのか、彼は大袈裟なほどに肩を落とす。
そして深い溜め息とともに短く“分かった”とだけ応え、その事に同意したのだった……。
亜也斗に呼ばれ新たに男の人が数人、外の騒音がまるで入って来ないこの部屋に集められた。
その間ボクは部屋の隅っこに蹲り、ブルブルと震えながらもこっそりとその様子を窺う。彼らは無言のまま何かの準備を着々と進めていた。
大きくて分厚いマットを二つ何処からか運んできて積み重ね、上から清潔感漂う真っ白なシーツを敷けば瞬く間にホテル並みの即席ベッドが出来上がる。
その脇では別の男の人が三人、即席ベッドと並行するようにテーブルを置いてその上にノート型PC3台を設置し、周りを取り囲んだ幾つかの照明器具やその他の機材とをたくさんのコードで繋ぎ合わせていた。
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