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第225話
「常磐さん準備できました。いつでも始められます」
暫くして全て準備が整ったのか、大柄で身体のガッチリしたツンツン頭の男の人が亜也斗にそう声を掛ける。
すると端に寄せられたソファに腰を下ろし、優雅にシャンパンを飲みながら寛いでいた彼は嬉しそうに立ち上がると、その男の人の元まで歩み寄っていった。
「流石は近藤くん、相変わらず仕事が早いね」
「まぁ、これでメシ喰ってますから……。それより男役は本当に吉良さんでいいんですか? アングルによっては顔、バッチリ映っちゃいますけど……」
「あ~、うん、構わないよ~♪ でもメインはおチビちゃんだからね、アップちょい多めで綺麗に撮ってあげて?」
近藤と呼ばれた男の人はこの中の誰よりも年上に見えるが、何故か亜也斗には敬語で話し掛け対応も年下に向けるものではない。
けれど此処ではそれが当たり前なのか彼の他にも同じ対応をされ、亜也斗は当然のように受け入れている。
よく分からない彼らの上下関係に首を傾げつつも見ていると、近藤さんは周りの人たちに目線で合図を送った。
それを見て男の人たちは一斉に動き出し、大きなビデオカメラや何かふさふさしたものが先端に付いた長い棒状のものを持ってベッドの周りを囲う。
そしてボクは一人の男の人に腕を取られ、恐怖で縮こまる身体を無理やり引き摺るようにして連れていかれ、そのベッドの上にポフンと放り込まれた。
「あうっ、あの……ボク、ここで何をする……の……?」
まだ状況が分かっていないボクはシーツの上に倒れ込むも、必死にモゾモゾと起き上がり周りの男の人に尋ねる。
でもその人たちは亜也斗が怖いのか、彼の顔色を窺いながら極力ボクと目を合わせず無視し続けた。
「さてと、どうしようかな~。どうせ撮るなら俺の趣味を活かした動画が撮りたいんだよね」
ベッドの上に倒れ込むボクを彼がゆっくりと見下ろしながらニヤリと微笑む。その眼はやっぱり『管理者』の人と同じだった。という事はこの後ボクに待ち受けているのは“ア レ ”しかない。
恐怖に身体の震えが増すが、その時そばにいた吉良さんが此方をチラリと見たような気がした。
けれどほんの一瞬だったため見間違いかもしれないと思い直し、ボクはベッドの壁際に寄って身を更に縮こませる。
だからか二人の会話はまったく耳には入ってこなかった。
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