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第226話

「すまないが亜也斗、あまりエグいのはナシにしてくれないか。じゃないと俺は勃たないし本番も使いものにならない」 そう言って彼は暗に自分を降ろせと訴えかける。我をどこまでも通す亜也斗なら、思い描く映像が欲しいハズだから……。 だけどそう上手くはいかなかった。何故なら彼が吉良さんの要望をすんなりと受け入れてしまったからだ。少し面食らう彼を余所に、亜也斗は至極満足そうに微笑む。 「男の身体はデリケートって言うしね、いいよぉ? おチビちゃんを虐めるシーンは後で撮るから、吉良は準備しててよ。出番きたら誰か呼びに行かせるからさっ」 「ハァ…………分かった。だったらSM紛いのも俺ダメだから、それもナシな」 「―――はぁっ!? っざけんな、おまっ! それじゃなんもできないじゃんかっ!!」 一旦引いたと見せかけて置いて、また別口から注文をつけると流石に亜也斗もキレた。 しかしどうあっても吉良さんにボクの相手をさせたいのか、最終的には折れて彼は渋々とだが了承したのだった。 そんなやり取りを知らないボクは何の反応も返す事なく、そのまま部屋を出て行く吉良さんの後ろ姿をただ呆然と見送る。 けどそちらに気を取られていたら、怒りも露わになった亜也斗がこちらへジリジリとにじり寄ってくるのが視界の隅に映った。 恐怖に身を竦ませながらも後ろは壁なので慌てて横へズレれば、その分だけ彼がこちらに近寄ってくる。 即席だが広すぎるほどの豪華ベッドだったのに、もう端っこに到達してしまいボクに逃げ場はなくなった。 「亜也斗……怖いっ、ボクここで……何するの……?」 「ふふ、おかしなことを聞くねおチビちゃん。この状況見てまだ分からないのってキミ馬鹿なの?」 「やっ、やぁっ! 触らなッ―――…」 ―――パシィイインッ!! 頭を触ろうとした亜也斗の手から逃れたい一心だった。でもその拒絶の言葉が気に入らなかったのか、皮膚を叩く乾いた音とともにボクの左頬に焼けるような痛みが走る。 初めは何が起こったのか分からなかった。 呆然と左頬を右掌で押さえ、目の前にいる亜也斗を仰ぎ見る。 そして支配者のようにニヤリと口角を上げて歪む彼の顔を見て、ようやく自分がブタれたのだと気づいた。

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