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第234話〜錯綜する想い〜(煌騎side)

倉庫周辺を監視する何名かの黒服の目を掻い潜り、歴代トップ以外は知り得ない秘密の抜け道から倉庫内へと侵入したまでは良かったが、中は想像以上に酷い有様だった。 物は散乱し、メンバー数人が包帯を巻かれた状態でそこかしこに座り込んでいる。 「白銀さんッ! 良かった、無事戻られたんですね!」 俺の姿を見つけた和之の腹心、(あり)() (ゆう)(しん)がすぐさま声を掛けてきた。その後ろには朔夜の補佐役、(しい)() (ゆき)も控えている。 彼らは直属のボスが不在――もしくは重傷を負っているため此処で待機していた。いつでも代わりに動けるようにと……。 「あぁ、……朔夜はまだ()()にいるのか」 挨拶もそこそこに本題に入れば2人は気まずげに互いを見合い、そして俺に視線を戻した。 朔夜は先ほどまで健吾と共に二階の奥で待機していたのだが、容態が急変し大量に吐血したので念の為に病院へ緊急搬送されたそうだ。 「そうか、だが健吾が強制的に病院へは連れて行かず今まで付き添っていたんだ。誤診したのでなけば大丈夫だろう」 「そう……ですね。だといいんですが……」 心配げに顔を歪める優心と雪に、俺は気休めかもしれないがそう言って気を落ち着かせる。 確かに朔夜のことは心配だがあの健吾が大丈夫だと判断し、今も傍についてくれているのなら安心して奴に任せられた。 それよりも今はチィのほうを最優先させなければならない。さもなければ今夜中にでも、日本を発たれる恐れがあるのだ……。 「情報はどのくらい上がってきている」 「今のところ有力な情報はまだ何も……。ですが常磐グループの現CEOの周りが急に慌ただしくなってます」 「もう父親にバレたか……いや、若しくは知っていて隠ぺいしようとしているのか」 「―――煌騎ッ、てめぇ戻ってたんならさっさと2階に来いよ! 心配したじゃんか!!」 2人と話していると煩い奴が二階から降りてきた。俺の顔を見るなり怒鳴り散らして煩いったらない。 本当にキレたら手に負えないヤツだ……。 「留守中世話を掛けたな、虎汰。他に問題はないか」 「問題ってッ――朔夜が病院に搬送される前、自分のパソコンがどうとかって言ってた。でも俺パニクってて……ごめん、色々聴き逃した」 不貞腐れ気味にそっぽを向くと虎汰は、肝心なことが聞き取れなかったと不承不承だが詫びた。

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