236 / 405
第236話
緊迫する空気を醸し出す健吾にそう怒鳴られ、和之は何のことだか見当もつかず呆気にとられた。
だが次に真剣な顔つきに変わり、周囲の皆を見渡し目線だけで状況説明を求める。
その様子を見て、そういえばこいつはまだ朔夜が重傷を負わされたことを知らないのだと思い至った。
透かさず優心が手短にそのことを説明してやると、和之は愕然とこちらを見遣る。それに俺は無言で頷いた。
「……あい…つはっ、朔夜は無事なんですかッ!?」
『はっ?……あぁすまん、ヤツなら大丈夫だ!今からちょっとした手術をするが大したことはない、俺が執刀するんだから心配するな!』
「……な…んだ、びっくりさせないで下さいよ健吾さんっ!」
朔夜の安否を尋ねる和之に健吾が明るく答えたのが隣にいた俺にも聞こえ、その場にいた奴らは全員安堵の息を吐く。
しかし普段のこいつからは想像もつかないほど、珍しく動揺を見せた事に驚きを隠しきれない。それだけ和之にとって、幼馴染みでもある朔夜の存在は大きいのだと、改めて思い知らされた。
『それより今から手 術 室に籠ンなきゃなんねーから、朔夜の伝言を手短に話すぞ!』
「あ、はい……お願いします」
『あいつの予備パソコンでトップ画面にあるファイル【N134k2z】っつーのを開け。そしたら俺ら凡人には意味の分からないアルファベットの羅列がズラッと並んでるらしいから、上から7番目をクリックしてみろ。そこにはあ る 捜索アプリが入ってる。操作方法はお前なら分かると言っていたから、その先は俺も聞いていない』
長々と説明を受けていた和之だったが最後に“分かりました、やってみます”と告げて通話を切った。
それから息吐く暇もなく朔夜の部屋へ向かうと合鍵で中へと入り、部屋主のパソコンを勝手に持ち出して皆を2階へ行くよう促す。
しかし優心と雪は幹部の部屋だからといって、中へ入ることを初めは躊躇した。
状況が状況だからと和之も構わないと言ったのだが2人は譲らず、小さな子供もいることから下に残ると聞かない。そのやり取りを黙って見ていた俺は静かにキレた。
「いい加減にしろ。規律だか何だか知らないがお前ら2人はいずれ俺たちが引退した後、上に立って貰わなきゃならないんだ。資格云々言う暇があるなら今はチィ捜索に全力を注いだらどうなんだッ」
ともだちにシェアしよう!