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第241話

ようやく糸口を見つけたと途端に皆は歓喜に湧いた。あとは俺の決断のみだ―――…。 「チーム全体に伝えろ、今からチィ救出に向かう!」 「そうこなくっちゃ! 早く行ってチィを取り返そうぜッ! んで、ついでに流星と朔夜の仇討ちだッ!!」 「―――但し!」 先走る虎汰に待てと目で制し、尚も言葉を続ける。焦ってはならない。こういう時こそ冷静沈着に物事を考え行動を起こさなければ、すべては失敗に終わり最悪チィを失うことになり兼ねないのだから……。 「和之はそのまま移動中も継続して動画の発信元を追跡、流星のチームは倉庫に待機させる! リーダー不在のままだが大地を代理として据え置き、()()の警護に当たるよう伝えろッ!!」 そう指示を飛ばすとすぐさま優心と雪が動き、リビングを飛び出していった。和之は再びPCに向き直るとギリギリまで追跡を開始し、虎汰には予備バッテリーを朔夜の部屋まで取りに行かせる。 暫くすると雪が車の用意ができたと呼びにきたので、俺たちも腰を上げそちらへと向かった。 しかし下の階へ降りる際に唖然とする。そこには滅多に集まらない白鷲の傘下チームのトップが、何故か雁首揃えて立っていた。 何事かと思えばその後ろには普段チィに怖がられ、傍に近寄ることもできない強面の連中もそこに控えている。 「白鷲トップがエラくお気に入りのガキがあの胸くそ悪い常磐に奪われたと聞いて、どんな情けない顔をしてるのかと拝みにきたが……なんだ、シャンとしてんじゃん♪」 「白銀さんっ、俺ら何でもするんで連れてってください! チィさんをあんなヤローから早く救ってあげましょう!!」 ふざけて言う『月影』トップの影山(かげやま)や、強面の連中が次々に声を掛けてくる。倉庫全体を見渡せば、そこには溢れ返るほどの仲間が集結していた。 「煌騎、あの子の居場所が特定できたんだって?」 その声に振り返れば、入口で俺たちを待つ優心と雪の後ろには奨の姿もある。 もうこいつにまで情報が入ったのかと感心しつつ、深夜を過ぎた今の時間帯なら昼間仕事をしてる人間にはキツいだろうと思い、訝しむ眼で見遣ると奴は苦笑を浮かべて肩を竦めた。 「誰かが倉庫を護らないと、だろ? ここは白鷲の拠点だ。お前らの留守中に何かあったらシャレになんねーだろが」 「なんだ、桂木さんもッスか! 俺らもそう思って駆けつけたンすけど、先客がこんないるんでもう帰ろうかと思ってたトコッすよ」 影山がまたふざけた口調で言う。 それでも皆の気遣いにささくれ立っていた心が落ち着き温かくなる。これをチィにも味わせてやりたいと、その時無性に思った。 外との繋がりを絶たれまったく人の温もりを知らずに生きてきたあいつに、無償でここまでしてくれる『仲間』の温かさを肌で感じさせてやいたいと切に願う。 「フッ、なら奨と影山に留守を頼むとしよう」 「げっ、俺は帰るって言ってるだろがぁ!……まぁお前らが早くケリつけて帰ってくるってんなら別にいいけどよぉ」 「素直じゃねーな、クソ坊主はぁ! ま、こっちは俺らに任せて早く行ってやれよ。待ってんだろ? あの子……」 あくまでふざけ倒す姿勢を崩さない影山の派手なピンク色の頭をこねくり回しながら、奨は俺にそう言い背中を押してくれる。 それに強く頷くと今度こそ足を前に進め、和之らを引き連れて倉庫を後にした―――…。

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