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第244話
ぼんやりとする意識の中、霞む目で周りを伺うとボクが横たわるベッドのすぐ近くに人の気配がして、そちらを視線だけ向ければわりと近くに男二人が立っていて、何か打ち合わせのようなものをしていた。
「それじゃ道具のほう持ってきますので、常磐さんはすみませんがまたちょっと待機して貰ってていいっスか」
明らかに年下と思しき男にペコペコと頭を下げながら、厳つい顔をした男はそう言い残すと部屋を出ていく。
あぁ、そうだ。ボクは亜也斗に捕まって、此処へ無理やり連れてこられたんだった。それで、どうしたんだっけ……此 処 って……何 処 ?
あれ、頭がはっきりとしない。上手く物事を考えることができないのは……どうしてだろう。
それに亜也斗の姿を見ただけでいつもは竦み上がり、あれほどの恐怖を感じてたのにいまは感情の起伏も感じられない。
何故か心が無風状態の水の上のように凪いでいた。
―――なんだ、“壊 れ る ”ってボクが丸ごと消えるんじゃなかったんだ……。
でもショックなハズなのにそれさえどうでも良かった。そんなボクに気がついたのか、亜也斗がこちらに近寄ってくる。
髪を鷲掴みにして頭を持ち上げ、無理やり顔を覗き込むけど大して痛くもないし怖くもなかった。だからされるがままでいると亜也斗が突然怒鳴り出して、ボクをめちゃくちゃに殴り始める。
あまりの激昂ぶりに機材などが倒れ周りの人は慌てて止めに入ったけど、ボクは虚ろな目でそれをぼんやりと眺めるだけだった。
「壊れるのが早いんだよこのクズがあァァァッ!! こっちはまだ遊び足りないっつーのにッ!!」
「常磐さんっ、落ち着いてください! とにかく次の撮影までに新しいの用意しますからっ、ね!?」
「俺はこの子が泣き叫ぶ姿が見たかったンだよッ! んでそれを観た白銀の怒り狂う様を遠くから嘲笑ってやるつもりだったのにッ!! 全部台無しにしやかってこんのクソガキがあァァァッ!!!」
怒りで我を忘れた亜也斗に周りの者も手がつけられないのだろう。ひとりの男が吉良さんを呼べと叫んで、別の男の人がよろめきながらも部屋を出て行こうとした。
―――と、彼が扉を開けた瞬間、やけに外側が静かなことに皆が気がつく……。
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