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第248話

周りを囲む男の人たちの何人かに視線を向け、シーツの人の身体を突き飛ばして彼を空港まで連れて行くよう言う。 神妙に頷いた彼らは仲間を数人を残し、ボクの身代わりとなった人を連れて足早に裏口から出ていった。 それを見た虎汰や優心さんたちは瞬時に彼らのあとを追おうとしたが、フロアに残る男の人たちが前へと立ち塞がり身動きが取れない状態となる。 その間もボクは何の感情もなく呆然と突っ立っていたが、囲う集団の一人に腕を取られその中に引き込まれた。 「あの人からはどうせ逃げられないんだ。変な気は起こすなよ、いいなッ!?」 そう腕を掴んだ人に耳元で囁かれる。 既に考えることを放棄したボクには何のことを言ってるのか分からなかったが、身体は条件反射のように気がつけばこくりと頷いていた。 「そういえば()()動画、観てくれた? キレイに撮れてただろ、せっかくだからみんなに観て貰おうと思って全校生徒に()()送っといてあげたよ♪」 「―――ッ!?」 挑発的な亜也斗の言葉に煌騎の眉がピクリと動く。その隙を突いて吉良さんが攻撃に出た。 いつの間にか妹さんをカウンター裏に残し音もなく忍び寄っていた彼は、斜め後ろから回し蹴りを繰り出す。――が、行動を読んでいた煌騎はギリギリのところでそれを躱し、隣にいた和之さんがスラリとした長い脚を振り上げそれを受け止めた。 それによって動きを封じられた吉良さんは咄嗟に胸の前に腕をクロスして庇ったが、煌騎の素早い蹴りを受け体勢を大きく崩して数歩よろめく。 けれども両脚で踏ん張って何とか転倒を避け、次の攻撃に備えて両腕でガードする体勢をとった。 その一連の流れに要したのはほんの数秒間、しかしそれを合図にフロア全体が再び大乱闘になる。 「ウル"ァ"アアアァァァァッッ!!」 「覚悟しろやっ、白鷲うぅぅぅぅッ!!」 虎汰と優心さん、それに雪さんを止めた厳つい顔の男の人たちが鉄パイプなどを手に一斉に飛びかかり、彼らは難なくそれを躱して反撃した。 数にしていえば圧倒的に煌騎たちのほうが不理だったが、そんなことは微塵も感じさせないほど彼らは有利な体制へと持ち込んでいく。 武器を所持した者から軽々と奪い取った虎汰は、優心さんと雪さんにボクの偽者を追うよう目配せした。 それに頷いた2人は、彼が拓いた隙間を透かさず突破して裏口へと突き進む。

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