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第249話

2人が抜けたことによって先ほどよりも不利な状況には陥ったが、何故か煌騎らは余裕の笑みを浮かべたままだった。 隣の彼と目配せしながら和之さんは何度となく吉良さんと蹴りや拳を交え応戦していたが、ふと互いに頷き合ったかと思うと積極的に前へと出始める。 そしてそれを皮切りに並んで交戦していた煌騎は、何の躊躇いもなくその場から離脱し背を向けた。 そこへ粗方の雑魚を片付け終えた虎汰が合流し、2人掛りで一気に総攻撃を仕掛け更に吉良さんを後退させる。 どうやら煌騎を完全にフリーにするため、彼らは自分たちに残りの注意を引き付ける気だ。 愉快そうにそれらを見つめていた亜也斗は、足元に転がっていた邪魔な彼の仲間らしき人を蹴って退かす。 「なぁ~んだもう形勢逆転かぁ、思ったより呆気なかったなぁ。大して面白くもなかったし、がっかりだよ。やっぱりこういうのは自分で相手しないと楽しくないね」 「フン、だったら回りくどいことしてないでさっさと掛かってきたらいいだろっ」 何の感情も見せない煌騎が前を見据え、静かに彼と対峙する。すると亜也斗はニヤリと笑うと右手を上げ、後ろに控えているボクたちを下がらせた。 それによりボクは腕を後ろから掴んでいた男の人に引っ張られ、強制的にこのフロアにあるもうひとつの裏口近くまで下がらされる。 そのあまりに不自然な動きにこの人たちが隙をみて、主よりも先に逃げるつもりだということが何となくだけど分かった。ボクの腕を離さないのは万が一の時の保険なのだろう。 亜也斗の言った通り、彼らは本当に自分のことしか考えていないようだった。それに対しては何の感情も湧かなかったけど、胸の奥がツキリと痛んだのは何故だろう? 見捨てられようとしてるのが不憫で、彼のことを憐れんでいるのかな。変なの、ボクもう心が壊れてるのに……。 「でもさぁ、あのおチビちゃんホントいいよねぇ♪」 彼らの不穏な行動を把握しながら、それを咎めるでもなくムシして亜也斗は煌騎を挑発し続ける。 「ちょっと虐めればすぐにいい顔して泣いてくれるし、身体はそんじょそこらの娼婦より淫らでエロいときてる。そりゃ前の『飼い主』がなかなか手放さないハズだよ」 「………何が言いたい」 一触即発の雰囲気の空気の中、彼はまた動揺を誘うような言葉を紡ぎ煌騎を巧みに誘導した。だけどそれには反応を示さず彼は冷たい眼差しのまま相手を見下ろす。

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