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第250話
そう何度も同じ手には引っ掛からないと分かっていたのか、亜也斗も大した驚きも見せずに喉の奥でくつくつと笑う。
その顔を見てふと頭にある映像が浮かんだ。
『戦闘狂の常磐は興奮 が上がると我を忘れて、痛みをまったく感じなくなるらしいぜ』
『――マジかよっ、ならどう倒すんだよ!?』
『そんなの知るか! つか、痛み感じねーんじゃムリだろ、倒すのなんて……』
誰だったか煌騎たちの倉庫1階にいた時、そんな会話をしていた気がする。
今それがなぜ浮かんだのかは分からないが、それは即ち攻撃を与えても彼は限界を超えるまで戦い続けられるということだ。
煌騎はそんな相手にどう立ち向かうのか、この場にいる全員が固唾を呑んで2人の動きを見守った。
「だからさぁ、お前も結局はあの子の身体が目当てなんだろって言ってんの。取り戻したらどうせ壊れるまでヤリ尽くすんだろ? だったら俺と大差ないじゃんか」
「なん……だと……?」
「あ~、チームのみんなで輪姦すのもいいかもね。あの子の価値はそれくらいしかない。泣き叫ぶ顔が目に浮かぶよ♪ くくっ」
「―――常磐ッ、貴様アァッッ!!」
ボクへの侮蔑の言葉に耐えきれなくなったのか、煌騎が怒りも露に亜也斗を睨み据える。それを待っていたのか彼の身体がゆらりと傾いた。
目にも止まらぬ速さで煌騎の目の前まで移動したかと思うと、腹にキラリと光るものを突き立てる。――が、寸でのところで彼は躱しその手を右手で叩き落とした。
カランと硬い物質のものが床に転げ落ちると、煌騎は透かさず足でそれを蹴って遠くへと飛ばす。
しかし躱されることも計算に入っていたのか、亜也斗は僅かにできた彼の隙を突いて回し蹴りを喰らわした。
その攻撃も煌騎は咄嗟に両腕でブロックし容易に衝撃を吸収する。
自分の攻撃を受けても微動だにしない彼を見て亜也斗はちっと短く舌打ちするも、その脚を素早く引いて体勢を立て直しもう一度今度は腹を狙って打ち込む。
「無駄だ常磐ッ、お前の蹴りはどれも和之ほど速さも重みもないッ!!」
「んだとコルアァァッ!! くっ―――…!?」
蹴りを得意とする和之さんが身近にいるからか、煌騎にとって彼の攻撃は赤子を捻るよりも容易いという。
その言葉通り余裕でその攻撃を躱すと彼は亜也斗の足首を掴み、バランスを崩した身体を反動で軽々と横へ投げ飛ばす。
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