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第253話
だが驚くのも無理はないのかもしない。彼がいない間にボクは壊れてしまったのだから……。
でもそれは吉良さんのせいなんかじゃない、ボクの心が弱かったせいだ。そう言いたいのに言葉が出ない。口を開く気力すらもう微塵も出なかった。
「遥ァ、お兄ちゃんたちこの怖い男の人らと大事な話があるんだ。だからさっきんトコ戻ってな」
静まり返ったフロアの静寂を破るように、亜也斗がなるべく笑顔を心掛けて少女に言う。
彼女はこてんと首を傾げたが、吉良さんがこくんと頷いて見せたので素直にまたカウンターの裏の方へ歩いていった。
それを確認すると亜也斗が気怠げに上半身を起こし、床に放置してあった血塗れのナイフを持ってボクの首にそっとそれを当てる。
「―――なんの真似だっ、常磐ッ!!」
「くくっ、ホンッットお人好しだよねぇ白銀って。そんなので極道の世界に入ってやってけるの?」
「いつまでふざける気だッ、俺が気に入らないなら俺を痛めつければいいだろ! もういい加減チィを離せッ!!」
何処までもふざける彼に煌騎の怒りも増し、怒鳴ってもいないのにその声はドスの効いていてフロア全体に響き渡った。
なのに亜也斗はボクの首筋に刃を滑らせるようにして撫で、もう片方の手で項を掴み身動きできないようにする。
「ふふ、やだね! こんな面白いオモチャ手放せるワケないじゃん♪ 壊れてもお前をからかって遊べるし、身体もまだ十分に使 え る ……だろ?」
「――――ッ!?」
「てンめぇっ、このクズヤローがあああああッ!!」
彼の言葉の意味を理解した瞬間、虎汰が亜也斗目掛けて飛びかかろうとした。――が、瞬時に和之さんが止めに入る。
頸動脈に近い場所に刃物があるため万が一にも刺さった場合、命に関わる怪我をしかねないからだ。
―――あぁ、またボクは彼らのお荷物になってしまっている。それがイヤでこちら側に来たのに……どうしてボクはこうも煩わしい存在なのだろう。
みんなの見てる前で亜也斗はボクの衣服にナイフを入れ、あっという間にボロボロに切り刻んでいく。
でもズボンだけは刻みきれなかったのか、吉良さんにすべてを脱がせろと命じた。
そして……、
「吉良、こいつをみんなの前で犯せ」
無慈悲にもそう言葉を紡ぐ―――…。
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