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第259話

すると吉良はまた俺たちの前に深々と土下座したが、皆はそれを冷めた眼差しで見下ろす。 「お前らが怒り狂うのも無理はないっ、俺はそれだけのことをした! だが亜也斗は茨の献身的な姿勢を目の当たりにして心を開きつつある。だからあいつを許してやってくれないかッ!!」 「―――なッ!? 都合の良いことばっか言ってんじゃねーぞ貴様ァッ!!」 吉良の言い分に流星はキレ、奴の胸ぐらを掴んで激しく揺さぶった。今回こいつは吉良に腹を刺されて病院送りにされた為に、チィを助けに行くことも叶わなかった。それを未だに引き摺っている。 あの時自分さえ油断しなければあいつは攫われなかったかもしれないと、後悔の念に囚われたままなのだ。 それを知っている吉良はそれ以上何も言えず、流星にされるがままとなった。 「………確かに流星の言う通りそれはお前にとって都合の良い話だ。常磐やお前のしたことはそう許されることじゃない。だが―――…」 「……“だが”?……なんだよ煌騎ッ、こいつの肩を持つっていうのかッ!?」 ゆっくりと話し出した俺の言葉に吉良だけでなく、虎汰や流星も怒りをなんとか鎮め真剣に耳を傾ける。これから言うことを躊躇い、俺はそっとベッドの上で未だ眠り続けるチィの寝顔を眺めた。 こいつならこんな時どうするか、それをまず第一に考えてやらなければならないと思った。 誰に対しても分け隔てなく心優しいチィが、深い眠りから覚めた時に悲しい思いをしないように……。 「もしこいつがいま目覚めていれば、俺らがどうこう言おうとあっさりお前らを許してるんだろうなとは思う」 「―――ッ!?……………確かに、そう……だな」 「うん、チィならそうするだろな……悔しいけどっ」 長く逡巡した後、虎汰も流星も頷いた。 チィと一緒にいた期間はそれほど長くはない。それでも俺たちは濃密な時間をあいつと過ごしてきた。 だからチィの望みも少しなら分かる。 あいつは迷いなくこいつらを『許せ』と言うだろう。 「ただし今後一切チィの前に姿を現すな、それが条件だ。それが呑めないのならこの話はここで終わりにする」 そう告げれば吉良は心底ホッとしたような顔を見せた。その後、何度も頭を下げて帰っていく吉良を見送った俺たちは、和之が戻ってくるまで抜け殻のように放心していたのだった。
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