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第264話
診察室を出てすぐボクは和之さんの身体に縋り付く。抱っこを強請ったら彼は苦笑いしながらも抱き上げてくれた。
「診察、疲れた?」
「ううん、でもボク和之さんに抱っこされるの好き」
「そっか、じゃあ検査と診察を頑張ったご褒美にたくさん抱っこしてあげるよ。あとは何して貰いたい?」
そう歩きながら和之さんに尋ねられ、ボクは嬉しくなってうんうん唸り一生懸命して貰いたいことを考えた。あとは何をして貰いたいだろう……?
病室へ戻る為にエレベーターに乗り込んだところで、ふとあることを思い出しボクはあっと口を開ける。
「ん? 何か思いついた?」
「んとね、ボク……和之さんと、チュウしたい」
「………え………」
恥ずかしくて彼の首筋に顔を埋めながら言うと、和之さんが戸惑ったように息を呑んだ。ボクそんなおかしなこと言ったかなぁ……。
いつもは挨拶を交わすようにキスをしてくれていたのに、まさか拒まれるとは思ってなくて途端にしゅんとなる。
それを見た和之さんは慌てて取り繕おうとしたけど、キスをして貰えないことにショックを受けて落ち込んでしまう。
すると彼はエレベーターの階数ボタンを屋上で押し、扉が閉まるのと同時にボクの唇へそれをそっと重ねた。
「このことは誰にも内緒だよ?」
「うん、誰にも言わない。だからもっと、シて?」
まるで悪戯っ子のようにクスリと笑う和之さんに、ボクはこくんと頷きもっとと強請る。優しい彼はまたチュッてボクの唇に触れて、頭を撫でるついでに髪も梳いてれた。
誰も乗り合わせていないエレベーターの中で、ボクたちは指定した階につくまで互いの唇を重ね合い、時折目を開けてクスクス笑いながらまたチュッとキスをする。
「ん………ンん………ンチュ……」
「チィは可愛いな」
「んふふっ………ン………んぅ?」
和之さんに舌先で擽るように唇を舐められ、ボクも真似してお返しに彼の唇をペロペロと舐めてみた。そしたら熱い舌がにゅるって出てきてボクの舌をペロリと舐められて驚く。
でも前みたいに胸が早鐘を打つように胸がドキドキしない。そのことに少しの違和感を感じたけれど、胸の奥のほうがぎゅうぅって苦しくならないから、ボクはこっちのほうがいい。
だから夢中で和之さんの首に腕を巻き付けて、甘いキスを強請り続けたのだった。
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