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第265話

そのままエレベーターで屋上まで上がってしまったボクたちは、人影のないところでまたたくさんキスをしたあと病室へと戻ってきた。 するとそこには虎子ちゃんがいて、和之さんの腕から降ろされたところを抱きつかれてびっくりする。 それに激怒した虎汰がすぐさま彼女を引き剥がしてくれたけど、ボクは女の子に免疫がないせいかドキドキと胸が変に騒がしくなってしまった。 「ったく、チィは病み上がりなんだから乱暴に扱うなよ!」 「だってしょーがないじゃないっ、昨日まで眠り続けてたチィが、私のいない時に限って目が覚めたんだもの! 嬉しいやら悔しいやらで気持ちの制御ができなかったのよ!!」 「まぁまぁ、虎汰も虎子ちゃんも……。チィが驚いてるから少し休ませてあげてくれないか」 そう言って和之さんは2人をやんわりと窘め、ボクをまた抱き上げるとベッドの上に寝かせる。途端にバツが悪そうな顔をした双子は、素直にごめんと謝り静かになった。 でもすぐに気を取り直してみんなでベッドの周りを囲み、虎子ちゃんはお土産のケーキが入った箱を差し出しボクに食べてとせがむ。 甘いものは和之さんに許可を貰わないと食べられないので彼の顔を伺えば、仕方ないなという表情をされたけど紙のお皿を出してくれた。 人数分あったケーキをそれぞれに配り、プラスチックのフォークでいざ食べようとした時、虎子ちゃんがボクの顔を見てこてんと不思議そうに首を傾げる。 「チィここに戻ってくるまでに何か食べた?」 「う? ん~ん、何も食べてないよ」 「そう? 唇がぷっくりと腫れて赤くなってるから、何か辛いものでも食べたのかと思ったんだけど……」 飲み物を用意しながら会話に耳を傾けていた和之さんだったけど、それを聞いて派手に紙コップを床にばら撒く。 流星くんが何をやってんだと訝しみながらもコップを拾って手渡し、彼は笑ってそれを受け取り今度は何事もなかったように飲み物を配り始めたのだった。 「ずっと眠り続けていたからかしら、起きて少し動いたお陰で血流が良くなったのかもね」 「きっとそうだよ! チィ、目が覚めてから顔色良くなったもんな♪」 何も知らない2人は無邪気にうんうんと頷き合う。だけど窓際にひっそりと立つ白銀の髪の男の人は無言のまま、ボクと和之さんをただ交互に見つめていた。

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