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第270話〜違和感の連続〜
「ここが、和之さんの……お部屋?」
退院してすぐ倉庫へと戻ってきたボクは、先ず最初に入口で屯 する強面の男の人たちに囲まれ歓迎された。
でもあまりにボクがビクビクするので彼らも気を遣い、部屋で休ませてあげてくださいと早々に引き上げていく。
やっと怖いお顔の人たちから開放されたボクは、内心申し訳ないと思いつつもホッと胸を撫で下ろし、1階の奥にある和之さんの部屋へと連れていって貰った。
だけど室内に入った瞬間、何か違和感のようなものを感じて歩みをピタリと止める。黒を基調とした家具が揃えられた部屋は、大人っぽくて和之さんらしいシックな感じだった。
記憶の中では彼とこの部屋でずっと寝起きを共にしていたハズなのに、何故か今日初めて目にしたかのような感覚になる。
先に奥へと入っていた和之さんがそれに気づくとやっぱりというような顔をして苦笑し、またこちらに戻ってきてその長身を屈ませその場に留まり俯くボクの顔を覗き込んできた。
「……やっぱり健吾さんの家に行く?」
「う~ヤダ、ボク和之さんとずっと一緒にいるもん」
「そう、ならおいで?」
ボクに両手を差し伸べ、それに抱きつくと彼は軽々と身体を抱き上げてくれる。
むぎゅうっとその首元にしがみつけば背中をポンポンされ、大きなキングサイズのベッドの上にゆっくりと下ろされた。
「覚えがないと思うけどここが俺の部屋だよ。どう感想は、狭いでしょ?」
「ん、上のお部屋よりもちょびっとだけ狭いんだね」
そう言って自分の言葉に驚く。
上の部屋ってどんなだっただろう……?
まるで思い出せなくてボクは慌てて和之さんにそのことを話した。すると彼はまた困ったような顔をして、でも慰めるように頭を撫でてくれた。
「そう何もかも慌てて思い出さなくてもいいんだよ、チィ。前にも言ったろ? これからゆっくり時間を掛けて、少しずつ思い出していけばいいんだから……ね?」
「う……うん、」
本当はまだ不安はあったけど、和之さんにあまり迷惑はかけられないと思い素直に頷く。
それを見抜いた彼は仕方ないなという顔をしながらも、優しい笑顔でボクを抱き寄せると膝の上に乗せ、ユラユラと身体を揺すった。
「大丈夫、大丈夫だよ、今度は俺がついてる。何があっても俺がチィを守ってみせるから……」
「うん……和之さん………好き………」
またボクのお口から自然に言葉が溢れ出る。
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