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第274話

「ごめんなさい、朔夜さん……えと……んと、なんのお話ししてたっけ……?」 取り繕うようにへらへらと笑いながら聞くと、彼は心底呆れたそうにボクを睨みつけ、それから肩の力を抜くとゆっくり首を横に振った。 「………悪い、今日退院したばかりのお前にコレを話すのは流石に酷だった」 「ん、どして? ボクだいじょぶ、元気だよ?」 「いや、これ以上は止めておく。そんなことしたら俺が和之に怒られる。あいつは怒ると地味に怖いんだ」 軽く落ち込む彼にどう接していいのか分からず、できるだけ明るく振る舞う。なのに朔夜さんは尚も首を横に振り続け、最もらしい理由をつけて話を逸らした。 何がいけなかったのか記憶がないボクは、苦笑いしながらも彼に乗せられたフリをして話しを合わせる。 相手がそう望むのだから仕方がない……。 「そなの? 知らなかった! じゃあボクも気をつけないとだね」 「あぁ、そうしろ」 朔夜さんはクスッと笑うとボクの頭をポンポンと撫で、ベッドの上に投げ出したPCを手元に引き寄せ膝の上に乗せる。 しばらくボクたちは会話もないまま、ソレを無心に操作する彼の姿を黙って眺めて過ごした。 それから何時間か経過した頃、外の景色が暗くなり室内の電気を付けないとと思い立ち上がったところで、部屋の扉が開閉する音が聞こえそちらに顔を向ける。 するとそこには大きなトレイに今日の夕飯のおかずだろう品を乗せて運ぶ虎汰の姿があった。 その後ろには流星くんの姿もあって何故か彼も大きなトレイを持っており、飲み物の入ったコップやご飯の盛ったお椀などをこの部屋に運び込んでくる。 驚いたボクは呆然とそれらを見ていたら後から入ってきた和之さんが苦笑し、ボクの背後に立ってぎゅっと抱き締めてくれた。 「ごめんよ、チィ。おやつを作りに行ったらこいつらが腹減ったっていうから、時間も時間だったしそれなら早めの夕飯にしようってなったんだ」 「俺ら育ち盛りだからな! いっぱい飯食って大きくならないと、だろ?」 ニカッと振り返って笑う虎汰の笑顔が眩しい。 その横で流星くんが部屋の隅に収納してあった大きめのテーブルを引っ張り出しながら、うんうんと同意するように頷いている。

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